東北大学の研究者らが、サンゴに含まれる磁性を帯びた粒子の磁気を測定することによって、宮良湾に分布する津波石がその次の津波によって動いたかどうかを突き止めた。同大学理学研究科地質学専攻の佐藤哲郎さんら6人が明らかにしたもので、研究グループでは「津波が何回来襲したのかをたった一つの津波石から解明でき、沿岸部のリスク評価につながる可能性がある」としている。この論文は米国の地質学会誌「ジオロジー」オンライン版に掲載された。
研究では、サンゴ礁由来の津波石に含まれる粒子が帯びている「残留磁気」と呼ばれる磁気に着目。
残留磁気の方向は、サンゴが海底にある状態では、地球が帯びている地磁気と同じ南北方向。しかし、津波で動かされることによっていったん地磁気の方向からずれると、その後、徐々に地磁気の方向に戻っていくという。
研究グループは2012年から約2年かけて石垣島内の津波石を調査。津波石から得られた測定結果を元に、津波石が動かされた時期などを算出した。
その結果、宮良湾にある200㌧級の津波石は約2000年前の津波で移動し、1771年の明和の大津波では移動していなかった。別の35㌧級の津波石は明和の大津波で沿岸部に移動していた。
同大学の中村教博准教授は「石垣島のサンゴ礁起源の津波石に地磁気が存在することを佐藤君が発見した。今後も石垣島で研究を続けるとともに、研究成果を東北地方でも活用したい」と話している。
同論文は東北大学ホームページに掲載されている。