石垣市議会が自治基本条例改正に踏み込んだ。議員提案議案としての適格性への疑義や議長不信任など野党の抵抗、一部の退席も「数の論理」で抑え採決した▼改正案のポイントは三つ。うち削除された条項は「住民投票」と「最高規範」で、修正は「市民」の定義。この条例をまさしく「骨抜き」にするものと言えよう▼どう釈明しようと「住民投票つぶし」にしか見えない。若者たちの草の根運動を、訴訟の根拠をなくそうという行為は、石垣市政に忌まわしい歴史の一つとして後世に伝えられるのではないか▼なぜそれほどまでに市民がその意思を表明する権利を敵視するのだろう。与党はかねて「防衛は国策であり市民的議論になじまない」と主張してきた。だが、自らはどんな手法をもいとわず陸自配備を進める政治的意思を明らかにする。野党から議案提案に「強引」や「拙速」との批判もあり、立ち止まって自治のあり方を顧みるいとまはなかったか▼何より条例に規定する改正手続きを経ないことから、当局が審議会答申や市民意見をどう反映するか、その過程が見えず、議会での慎重審査もないのが残念だ▼条例は地方自治の基本理念とまちづくりの指針を定めた石垣市の自治の到達点。それを軽々と否定する行為を何と呼べばいいのか、言葉を失う。(慶田盛伸)