リュウゼツランの花径が青空高く屹立している。市健康福祉センター西側、シード川河川管理道路沿いに2本。無数の黄色い花が散れば緑の種子が付いてゆく。人の手によって植えられたものと思われ、1本は7㍍ほど、もう1本は5㍍ほど▼一般に成長は遅く、数十年に1度しか咲かない植物。開花の年には一夜に10㌢伸びるといい、高さ10㍍余りにも達するものも▼はるか昭和。集落近郊の海岸や旧飛行場の南端に赤瓦屋根の待合室があった頃の周辺原野。あるいは八重高北側の墓群域など、あちこちにそれこそ無数に自生していた。授業に飽いたうわの空の時間、何思うでもなく林立するリュウゼツランを眺めていた記憶がある▼復帰後、土地改良事業や都市基盤整備、宅地開発など社会資本の整備が急速に進んだのとひきかえに、リュウゼツランの花径が立ち並ぶ風景は急速に姿を消していった▼時は流れ、いつしかそんな風景があったことすら忘れていた。思えば来年は復帰50年、島々は変わりゆく。かつての風景の保全のためにも株を増やしてはどうだろうか▼令和に至る半世紀、私たちは何を手に入れ、何を失ってきたのだろう。それは善悪や好悪の単純な視点で考えることではないのかも知れない。はるか遠い日々をリュウゼツランの花径に見た。(慶田盛伸)
↧