国の2012年度地域の元気臨時交付金を活用し、竹富町(川満栄長町長)が13年度内の完了を見込んで着手した3事業のうち、2事業で年度内に事業を完了することができず、総額5876万円の交付金を国に返納した。町では返納分を一般財源で手当する方針だが、他の分野で町民の福祉向上を図るために活用されたはずの財源支出に町議から厳しい指摘が相次いでいる。(上地矢寸志記者)
■交付金の返納
臨時交付金を返納した事業は新城島防災施設新築整備事業と竹富島複合施設ゆくい処整備事業の2事業。新城島はボーリング調査と設計業務は完了したものの本体工事が遅れ、交付見込み額5000万円のうち、4618万円を返納。竹富島も交付見込み額1506万円に対して返納額は1258万円に上る。
中でも新城島では入札不調により、本来A・Bランクの業者が請け負う額の工事をDランクの業者と随意契約。さらに、契約、着工も12月定例町議会での可決後となり、議員からは「4カ月で家が建つのか」(大石功幸氏)など、執行体制を批判する指摘が相次いだ。
■入札不調と随意契約
町発注の公共工事は昨年度、指名競争入札で参加業者が予定価格内で落札できずに入札不調となり、随意契約で事業を執行する事例が相次いだ。町側は昨年度の消費増税に伴う駆け込み需要で民間の建築工事が増え、業者側が公共工事に対応できない点を説明する。
予定価格の積算根拠となっている県単価は数カ月ごとに更新されているが「短期間で資材単価が上昇。見積もり時点と発注時点ですでに価格差が生じている。過去にはない状況だ」(川満町長)と窮状への理解を求める。
■積算根拠の見直しを
資材単価の上昇が続く中、随意契約後に契約金額を上乗せする事例もあり、新田長男氏は「最初から上乗せ分を踏まえて入札にかけていたら入札を辞退した業者が落札できていたかもしれない。談合と言われても仕方ない状況だ」と指摘する。
特に新城島の事例では入札不調で着工が遅れた経緯もあり、順調に入札・着工していれば交付金を返納する事態を避けられた可能性が高い。「予定価格の積算方法が問題ではないか。県単価は離島で構成されている町に合わない可能性がある」(新田氏)と改善を求めている。