南ぬ島石垣空港が開港して以降、八重山管内では有効求人倍率が右肩上がりで推移する一方、ホテル業などでは人手不足が著しく、事業所が賃金を引き上げて人手を確保しようとする動きが広がっている。「賃金の上げ勝負」とも言える状況に、八重山公共職業安定所(下里勝則所長)の八木陽子統括職業指導官は「求人と求職者のバランスが不安定。求人倍率が増え続けるのは問題」と指摘する。
■求人1・8倍
同所によると、管内の雇用状況は、ホテル業の場合、新空港開港前の2012年度は492件の求人数に対し181人の求職者数だったが、開港後の2013年度は求人数が1・8倍の867件に達したのに対して、求職者数196人で1・1倍の伸びにととどまっている。
同所では、事業者が賃金の見直しを行った求人票には矢印を表示したり、時給を上げた企業の詳細を一覧表にして掲示したりする工夫を行っているが、人手不足を解消する決定打にはつながっていない。
■大手に追随
宿泊・飲食業の時給はこれまで約750円で推移。しかし、人手不足が解消されないことから、昨年11月には大手ホテルが求職者の早期獲得に向け、同所に提示していた求人票を見直して時給を100円アップ。ほかの企業も追随し、時給を50円から100円引き上げる動きが広がった。
八木統括職業指導官は「賃金の引き上げは既存の従業員にも及ぶため、(事業所側の支出に占める)人件費の割合が大きくなる。八重山は中小企業が多い。このままでは大手企業との体力勝負になる」と指摘。賃金を上げても求職者がいないケースもあり、人件費を元に戻す企業も出ているという。
■「最近は異常」
中規模ホテルに勤務する男性(31)は「今年から時給を徐々に上げ始め、今日までに120円増となったが、人は来ない。他社も一斉に賃金を上げるのでうちらもやらないわけにはいかず、この状況は痛手。新空港効果がいつまで続くのか分からないが今後のピーク時を考えれば人手は必要。上げ勝負はまだ続くと思う」と話す。
大型ホテル勤務の男性(46)は「賃金は社内規定に従っているが、最近の賃金形態は高いほうに変化し、異常だと感じる」と驚いた様子。