石垣市白保出身で県指定無形文化財「八重山古典民謡」保持者の仲宗根長一さんが亡くなった。生涯の天職として三線と島唄を愛し続けた89年の人生だった▼石垣市のとぅばらーま大会でチャンピオンになり、八重山だけでなく沖縄の民謡界にも大きな足跡を残した。生前は「八重山民謡すべてに情があり、歌の内容をよく知らないと情は出てこない」と熱く語り、生きている限り人生日々研さんを信条とした▼6年前、本紙の文化賞特別賞に輝き那覇市の自宅でインタビューしたことがある。話が戦時中に及んだ際、市出身の特攻隊員・伊舎堂用久中佐が白保飛行場から出撃した場面を説明▼三線を手に取り「さらば元気でいてくれと 恋し白保をあとにして」と歌うと突如、涙ぐんで言葉に詰まった。公演などでも、この「伊舎堂隊の唄」を歌う時は、いつも涙を流しておられた▼父親の背中をみて育つ。長一さんの側には、師と仰ぎ、学びながら温かく見守る長男・充さんの姿があった。これまで多くのファンを魅了してきた父子リサイタルが、途切れるのはなんとも寂しい▼親子の絆。「世や変わり行くとぅてん 親子兄弟変わるなよ 今ぬ世ぬ中や命どぅ宝」。長一さんの黄金言葉が聞こえてくるようだ。本日、那覇市で告別式が執り行われる。ご冥福を祈りたい。(鬚川修)
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