■依然差別と苦痛続く
あす5月15日は沖縄が27年間の長い米軍支配から解放されて本土に復帰した42回目の復帰記念日だ。しかし42年を経た今なお沖縄は、広大な米軍基地を押し付けられたまま、オスプレイ配備など日米両政府から次々新たな差別と苦痛を強いられ、自衛隊は与那国で配備が進むなどついに八重山の離島にまで拡大配備される状況となった。
それにしてもこのところの新聞紙面を見ると、安倍政権の戦争もしかねないきな臭さが目立ち、沖縄関係も明るいニュースは多くない。県民挙げて県外移設を求めた米軍普天間飛行場は、県選出の自民党国会議員らが次々公約を破棄。ついには知事も国の埋め立て申請を承認して今秋にも名護市辺野古で建設が強行されることになった。
その結果、反対住民と県警などの同じ県民同士がぶつかり合う不幸な事態が予想され、それだけに11月の県知事選で県民が沖縄の要求をことごとく無視する国にどういう答えを出すか。
■貧困も非正規社員も全国一
水産業の面でも、尖閣問題を有利にする国益のため、八重山などの漁民を犠牲にした日台漁業取り決めは、漁業者の不安が的中し、台湾側は漁獲量が3倍増、沖縄の漁業者は激減し大きく明暗を分けている実態が明らかになった。
さらに沖縄の県民所得は全国最下位、失業率は全国一が続いているが、こうした状況を受けて所得が国民平均の半分に満たない貧困率は全国平均の約2倍の29・3%、さらに収入が生活保護水準以下の働く貧困層「ワーキングプア」は同じく約3倍の20・5%、そして非正規労働者も44・5%でいずれも全国一であることが分かった。
八重山もほぼ同様のレベルにあるだろうし、そこから脱け出すにはどうするか、子どもの貧困も合わせて独自の調査でまず実態把握が求められる。
■修学旅行のキャンセル相次ぐ
日米の基地問題でも、石垣市が350~400人規模の陸上自衛隊の候補地に挙がっていることがあらためて明らかになった。42年前の復帰当初、離島の八重山は米軍基地はもとより自衛隊基地とも無縁と思っていたのが、ついに右傾化はここまで来たかと不安な思いをしている人は少なくないはずだ。
石垣市長は自衛隊配備で申し出があれば、話し合いのテーブルに着くと否定的ではない。しかし軍事基地が観光産業にマイナスとなるのは、13年前の2001年9月に世界を震撼(しんかん)させた米同時テロの際、沖縄が体験した。
「米軍基地が集中する沖縄は危ない」と修学旅行生を中心にキャンセルが続出。風評被害払拭(ふっしょく)のため「だいじょうぶさー沖縄」のキャンペーンを強いられたが、同年10~12月の観光客の落ち込みは19%、観光収入の減少額は200億円余に上り、県経済は大きな打撃を受けた。
八重山は今、昨年3月に開港した新空港効果で観光客が急増。7、8年前から続く低迷期からようやく抜け出し活況を呈している。観光産業は経済や政治動向に大きく左右されて不安定なだけに“観光の島”は与那国もそうだし、そのリスク(危険性)を自ら背負うことは当然避けるべきだ。