■基本設計が始まる
郡民の期待が高まる新県立八重山病院設計のプロポーザルコンペと住民説明会が終了した。今後は基本設計、実施設計を経て、2015年度に建築工事の発注、16年度中に完成、3年後となる17年度初めに移転開院の運びとなるが、新病院は50年先を見据えた国境離島医療のモデルとなるべく関係者の議論が進んでいる。
現八重山病院は建築後34年を経過していて建物や設備の老朽化が激しく、職場環境の悪化等から医師や看護師の慢性的な人材不足が続いている。
現状では地域完結型の診療体制が確立できているとはいえず、医療に対する不安から沖縄本島等への自発的転院や急患の移送に海上保安庁や自衛隊機に頼る不安定な状況であり、本土や本島との医療格差が大きく、患者、家族の精神的、経済的負担は限界を超える状況となっている。
■地元調整に課題
今回提示された基本計画によると建築場所は旧空港跡地、敷地面積は4万平方㍍(現状より64%増)、建築延べ床面積は2・3万平方㍍(現状より41%増)、病床数は288床(現状維持)、診療科目は現状の22診療科プラスアルファ、総工費は概算で100億円となっている。
新たな診療科目に口腔(こうくう)外科新設が決まったものの、医療を守る郡民の会から要望の強い「石垣市立休日夜間救急診療所」の院内運営問題、許可病床数350の確保と、完全個室化、がん患者など難病の高度医療体制確保などは現段階で計画に織り込まれておらず、今後の地元調整に課題を残している。
■待ったなしの医療
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、60年の人口は少子高齢化が進み、8674万人(33%減)と推計され、出生数は現在の半分以下、高齢者は増加を続け、男性の平均寿命は84歳、女性は90歳という歴史上未経験の老人社会へ突入するという。
救いは沖縄県の人口が高い出生率と好調な観光産業に支えられ、40年ごろまではほぼ現状の水準に留まり、その後緩やかに減少するとしていることである。
八重山圏域においても県と同様の推移を示すとされるが、人口問題は医療計画に大きな意味をもっている。現在、100万人規模の八重山観光だが那覇空港第2滑走路が完成する6年後以降に県は1000万人観光客が現実的となり、八重山も150万人規模になるものと推計される。
1日当たり4100人が来島し、3泊すれば滞在人数は1・2万人(現在8200人)、観光従事者も現状より4000人多い1、2万人が必要となり、圏域人口の増加要因となってくる。外国人観光客数は20%以上になると推計され、国際観光都市としての受け入れ整備は医療を含め、待ったなしである。
また八重山は台風等、自然災害に備える必要がある。9400人の犠牲者(当時人口の3分の1)を出した明和の大津波から241年、国境離島のライフラインを守るいわば「最後の砦(とりで)」としての八重山病院でなければならない。県は地元住民の要望を真摯(しんし)に受け止め、世界に誇れるモデル病院となるよう建設に取り組んでほしい。