八重山と台湾の交流をさらに密にしようと、現地で奮闘している人物がいる。4月から石垣市初の海外駐在員として台湾・台北に派遣された市企画政策課の小笹俊太郎さん(38)。赴任から3週間余り。早速、台東で計画されているアートをテーマにしたイベントへ石垣からの出展を検討中だ。従来の観光の枠を超えようと、新たな試みに挑む小笹さんに、思いの丈を語ってもらった。(研修生・井上雅大)
■精力的に活動
小笹さんは県産業振興公社台北事務所の副所長として沖縄県全体の観光PRに努める傍ら、八重山を台湾で売り込もうと取り組んでいる。この3週間、台湾のアート関係者との懇親会や現地の旅行代理店へのヒアリングなどをこなす一方、暇があれば街に繰り出し、沖縄物産のリサーチにも取り組み、精力的に活動している。
いざ台湾に足を踏み込み、現地のマーケットの中に身を置くと、石垣島とは違った視点が見えてくるという。 「台湾人にとって、石垣島は『台湾から一番近い日本』。南国的な雰囲気とともに、ショッピングや和食といった要素も期待してやってくる人が多い」と話す。そのため、「島内の店舗の少なさや移動手段の不便さに、現場ではクレームも起きている」といい、観光の「ミスマッチ」が顕著。単純な観光客数といった「量」だけでなく、「質」の向上も待ったなしと説く。
■伏線
現在は、アートで地域振興を図っている台湾・台東と連携し、八重山の独自の文化を発信しようと、8月の台湾東部の台東市で開かれる「台東デザインエキスポ」への出展を計画中。八重山の良さを見つめ直し、コアなファンを獲得しようという新たな取り組みだ。
同エキスポへの出展には、伏線がある。その一つは昨年夏から石垣島で始めた「USIOデザインプロジェクト」だ。同プロジェクトでは、日本や台湾など世界中のアーティストからアイデアを募り、石垣島の特産物をリニューアルし、地場産業の再発見に一役買った。「自分たちの良さをアートで相手に伝えることで、息の長い石垣ファンをつくりたい」と意気込む。
また、年間90万人もの観光客が本土から訪れる石垣島は、台湾企業にとって「絶好の市場」(小笹さん)とも。台湾との近さは、八重山に多くの可能性をもたらすと語る。
■中国語で注文も
プライベートではダイエットをしなければならない身でありながら、「(台湾での生活は)おいしい食べ物がたくさんあり過ぎて困る」と苦笑い。最近の楽しみは、屋台で買ったおかゆや豆乳などの朝食をオフィスで食べること。中国語も少しずつ覚え、今では屋台での注文も地元民さながら。
小笹さんと台湾との出会いは、2年前に石垣島で開催された「うたの日コンサート」に台湾の歌手を招いたことに始まる。以来、台湾との交流に関心を抱いてきた。
「島の外に出ると、台湾との近さは八重山にプラスだと分かる。台湾は今、とても勢いのあるホットな場所。八重山の人たちも、台湾に足を運んでほしい」
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小笹さんは台湾での活動をフェイスブックで発信している。「石垣市台北駐在員的日記」(https://www.facebook.com/ishigakilovestiwan)。