石垣市教育委員会文化財課の職員と市民ボランティア約20人が29日から、於茂登岳周辺でアサヒナキマダラセセリの採集禁止を呼びかけるパトロールを行っている。このチョウは石垣島の於茂登連峰、西表島の古座岳、古見岳の山頂部でのみ生息している固有種。近年はネット上での売買も確認されており、職員とボランティアたちは「採集しないで。ましてや売買はやめてほしい」と呼びかけている。
キマダラセセリは近縁種の分布がヒマラヤから中国大陸の奥地、台湾の高山などであることから、氷河期からの遺存種と考えられている。1978年には県の天然記念物に指定。環境省のレッドデータブックでも「絶滅のおそれのある生物」として絶滅危惧Ⅱ類にリストアップされており、厳重な保護が必要とされている。
近年、マニアによる密猟が問題となっており、インターネット上や標本の即売会で売買されているケースも。2008、10年には不法採取で検挙者も出ている。
市民ボランティアの渡辺賢一さん(63)=日本トンボ学会監事、環境省希少野生動植物種保存推進員=によると、同チョウはセンダングサの蜜(みつ)を好み、吸っている間は人が近づいても気付かないほどだという。乗車したまま窓から網を使って採ることもできるため、同チョウが道路近くに寄ってこないように道路沿いの食草を除去する作業も行っている。
渡辺さんは「昆虫採集をしている人が悪者扱いされるのは残念だが、この時期はしようがない。八重山の固有種を持ち出さないでほしいし、ましてや売買しないでほしい」と訴えている。
同じくボランティアの松島昭司さん(64)は「琉球列島の地史を知る上でも貴重なチョウ。県天然記念物のコノハチョウも合わせて絶対に採らないで」と呼びかけている。パトロールは八重山警察署も協力し、5月31日まで行う。