本格的なクロマグロシーズンを迎える中、県八重山農林水産振興センターではマグロの「ヤケ」防止に向けた情報収集や調査を行っている。「ヤケ」はマグロを水揚げ後、身が焼けたような状態になるタンパク質の変性で肉質が変わり、刺し身にできないため商品価値が大幅に下がる。このため、同センター農林水産整備課の智名真智子主任技師は「漁業者と研究者の情報をフィードバックさせることでヤケ防止につなげていきたい」と話し、ヤケ防止方法を模索している。
マグロ類は体温が水温よりも高く、背骨周辺に体温を保つ構造で水温が高くなる4月ごろから「ヤケ」が発生。7〜11月に多くなり、発生率が30%を超す(2001年、知念沖)こともあるという。
「ヤケ」たマグロの肉質は水っぽく、食感も悪くなり、酸性度が高くなることで酸味もあって「刺し身では食べられなくなり、商品価値はゼロになる」(智名主任)という。
八重山漁協の与那嶺幸弘課長は「少しヤケただけでも損害は大きい。長時間、深い海域ではえ縄にかかって、暴れずに安楽死したマグロはあまりヤケないようだが、その時々の状況によって異なる。漁業者もみんな研究しているが、永遠のテーマだ」と頭を痛めている。
同センターによると、伊良部漁協ではマグロを生きたまま、冷たい海水に浸すことでヤケの発生を抑えているが、船舶に予冷槽の確保が必要となるため、小型船舶の多い郡内の漁業には向いていない現状もある。
防止方法は確立されていないものの、漁業者によって対応は異なり、智名主任は「漁業者の皆さんはそれぞれ我流の対応をしているようで、他人の技術を見る機会もないため、情報を交換することが必要だ」と述べ、漁業者から聞き取り調査などを行っている。
外観から「ヤケ」を判断することが難しいこともあり、智名主任は「仲買人も夏場にマグロを仕入れるときは神経をとがらせていると思う。仲買人がどのようにヤケを判断しているのか伺いながら、ヤケ防止法の情報を集めたい」と話した。