【与那国】社会福祉法人ダンヌ会(上地国生理事長)が運営する町内唯一の特別養護老人ホーム「月桃の里」(定員30人)に対し与那国町(外間守吉町長)は18日、昨年12月に町出身の匿名者から受けた1億円のふるさと納税から3500万円を来年3月議会に支出で計上することを明言した。12月定例町議会で与那原繁氏の一般質問に答えた。施設は介護保険制度の開始や人口減少などで入所者が低迷。累積赤字の拡大で町に助成を求めていたところ、匿名者が施設への支出も含めて町に寄付した。施設側は「存続に向けた足掛かりになる」と答えた。
運営が逼迫(ひっぱく)している月桃の里に対して町は昨年12月に町費で1000万円を支出。今年度から施設利用の町民を対象に入所促進対策費として、昨年12月に匿名者からあったふるさと納税1億円を活用して月2万円を助成している。
ただ、匿名者は1億円の使途で4000万円を施設に充当することを要望しており、この日の質問で与那原氏は「目に見える形で再建をお願いしたいという意図。納税者の意思を裏切らないでほしい」と要望。町側は「高齢者が元気になるような考えで受けており、施設への支出ととらえていなかった。3月議会で支出予算を組む」と弁明した。
一方、1999年に設立した施設は当初、町内利用者で満床だったが、2000年4月に介護保険制度の開始に加え、人口減少などで入所者が落ち込んだ。
12年からは約500万円の赤字が続き、介護報酬の改定が行われた15年には約2100万円の損失を計上。17年度は町から1000万円の補助を受けながら約400万円の赤字となっており、今後は累積赤字の解消に向けて事業計画の見直しが必要になりそうだ。
現在の施設利用者は20人にとどまっている。
上地理事長は取材に、支出金を運転資金に企てる考えを示し、「納税者の意思に反して1年余りも支出しない町の姿勢はおかしいが、高齢者の次の住処が確保されて納税者には感謝している」と答えた。
一部で広がっている施設を転売する話には「慈善事業として施設を運営しているので、転売などは一切考えていない」と強調した。