防衛省が2012年3月に、「南西諸島での将来における戦い方」として石垣島が侵攻されたことを想定し、島しょ奪回のための作戦を分析していたことが分かった。奪回に必要な戦力をはじき出している。同省によると、これらの成果は、現行の防衛計画大綱と中期防衛力整備計画に反映された。赤嶺政賢氏(共産)が11月29日の衆院安全保障委員会で、同省の内部文書として取り上げた。
赤嶺氏が入手した文書は、同省内部の機動展開WG(ワーキンググループ)が12年3月29日に作成した「機動展開構想概案」。赤い文字で「取扱厳重注意」と記されている。
答弁によると、WGは10年12月から13年12月にかけて設定された。その間、政権交換があったため最終報告には至っていないが、中間成果としてまとめられた。
それによると、2000人の自衛隊普通科連隊が事前配備された石垣島に、敵4500人規模の海空戦力が上陸し、どちらか一方の残存率が30%になるまで島内6カ所で戦闘を実施した場合、兵力数は自衛隊538人に対し敵2091人で劣勢に。
だが、敵の増援部隊が到着するまでに約1800人規模の陸自戦闘部隊を上陸させれば、最終的な兵力は自衛隊899人に対し敵679人で優勢。その結果として、約2000人の部隊を増援すれば奪回可能と分析している。
一方、概案は自衛隊の機動力や輸送能力について検討したものの、国民保護のための輸送については「自衛隊が主担任ではなく、所要も見積もることができないため、評価には含めない」とした。
赤嶺氏は「島が戦場になったとき、住民はどうなるか。軍隊と住民が混然一体となり、苛烈な地上戦が行われた沖縄戦の再来になる。自衛隊配備の空白を埋めて国民の命を守り抜くと言っているが、保障はどこにあるのか」とただした。
岩屋毅防衛相は「国民保護に最大の配慮を払いつつ、もし侵攻があった場合には奪回を考えていくことは当然だ」と説明した。