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「蔵元絵師の画稿」“里帰り” 鎌倉氏所蔵の2点

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八重山博物館に寄贈された「蔵元絵師の画稿」2点

 重要無形文化財「型絵染」保持者(人間国宝)の故・鎌倉芳太郎氏が所蔵していた「蔵元絵師の画稿」2点が、弟子の篠原晃代さん=横浜市=と、晃代さんの息子、正明・優子さん夫妻=同=を通じて13日、石垣市教育委員会に寄贈された。画稿は、鎌倉氏が1923(大正12)年に美術工芸調査で石垣島に赴いた際に、蔵元最後の絵師を務めた宮良安宣氏から譲り受けたもので、晃代さんらの厚意で“里帰り”する形になった。資料は市立八重山博物館で保存・活用し、今年度末から来年度にかけて公開される予定。

 蔵元は、琉球王府時代に久米島と宮古・八重山諸島に置かれた地方行政庁で、蔵元絵師は役人として、王府から送られてくる織物の図案を写し描いたり、漂着船乗組員の似顔絵を描いたりしたほか、祭祀(さいし)行事などの風俗図、開墾地の測量図、地図などを作製した。

 八重山博物館には、75(昭和50)年と82(同57)年に鎌倉氏から寄贈を受けた画稿114点が所蔵されており、市指定文化財を経て、2011(平成23)年に県指定有形文化財(歴史資料)となった。

 画稿は、宮良氏が絵師だった1891(明治24)年から97(同30)年に描いたものを中心に、宮良氏の叔父で絵師だった喜友名安信氏らのものも含まれ、当時の人々の生活をうかがい知ることができる貴重な歴史資料となっている。

 13日午前、晃代さんらに代わり、県立芸術大学名誉教授の波照間永吉氏が石垣安志教育長に資料を贈呈。いずれも約30㌢×約40㌢の大きさで1点目は庶民の生活と鶏、2点目は行列の様子が墨で描かれている。波照間氏は「1枚目は鶏が大きく描かれていて非常に珍しい。琉球絵画では鶏や軍鶏を描いた名画があり、その流れを感じていたことを思わせる。2枚目は、114枚の中に類似した絵があり、行列の一部分と思われる。八重山の重要な年中行事の具体的な姿を補う1枚になっていると思う」と話した。

 波照間氏によると、鎌倉氏が持っていた紅型関係資料を晃代さんが保管していることを鎌倉氏の遺族から聞き、ことし10月に調査したところ、紅型の型紙や裂地(布)類に交じって画稿2枚を発見。114枚のうち1枚のコピーもあったという。波照間氏は「(114枚に)2枚が加わり、さらにはもっと出てくる可能性があるということ。日本のどこかにあるかもしれない画稿が、八重山に帰れるように探索を続けていきたい」と意義を語った。

 石垣教育長は「長きにわたり資料の保管にご配慮くださり、市への寄贈にご理解いただいた篠原家の皆さま、資料の“里帰り”にご尽力いただいた波照間氏に感謝申し上げる」と礼を述べた。


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