八重山出身の前新科子さん(89)と森田吉子さん(100)が先月中旬、家族と一緒に台湾を訪れた▼入居している高齢者施設を運営する社会福祉法人憲章会(石島衞理事長、南城市大里)が企画した旅。ほかに2人の入居者が参加し、車いすと歩行器を4台ずつバスに積み込んで移動する▼森田さんは、日本統治期の台湾で暮らしていたころのことを少しずつ語り、参加者はその体験をシェアしながらゆかりの地を回った。森田さんの体験を通して、八重山と台湾のつながりを再確認していくのだ▼昼食では、レストランに着いたものの、お年寄りのひとりが「降りない」と動こうとしない場面があった。結局ほかの参加者が食事を終えるまでバスで待つことになった▼日々の介護には、だれしもそれぞれ思うところがあるだろう。ほんのわずか同行しただけでは、その心の内を垣間見ることさえできない。台湾まで付き添ってきた家族の姿に心を動かされ、準備を進めた法人側の取り組みに敬服するばかりだ▼人気観光地の十分では、全員でバスを降り、雨の中でランタン(天灯)を揚げた。その時の写真には、参加者が雨がっぱを着込んで並んでいる。いい顔ばかりだ。みなさん、お疲れさまでした。台湾の旅がいい思い出として残っていてくれればと思います。(松田良孝)
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