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「新時代沖縄」に期待を

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 ふたを開けてみれば思いもよらぬ大差だった。 9月30日投開票の県知事選挙は無所属新人で前衆議院議員の玉城デニーさん(58)が同じく新人で前宜野湾市長の佐喜真淳さん(54)を8万174票の大差で破り初当選を果たした。

 ■過去最高得票

 玉城さんの得票数は39万6632票。人口の少ない離島などを除いて多くの市町村で相手候補を圧倒した。前回翁長雄志さんが初当選したときの36万820票を3万5812票も上回って過去最高だった。相手候補との得票差も翁長さんが仲井真弘多さんを破ったときの9万9744票に迫るものだ。政府・国政与党を挙げてのなりふり構わぬ攻勢をはねのけた文句のつけようのない大勝利だと言わざるを得ない。この数字をどう読むか。

 やはりウチナーンチュは、いまだ諦めていなかったということだろう。選挙戦の前から辺野古新基地建設をめぐり反対派にも「国には勝てない。工事は止められない」というあきらめムードが広がっているなどという風評が流れていた。それを吹き飛ばしたのは、玉城さんが「翁長さんの後継者である」ということと翁長さんが命をかけて新基地建設に「ノー」を突き付けたという事実を前面に出してきた戦略ではなかったか。

 ■遺族ら前面に

 元来、ウチナーンチュは亡くなった人の思いを大事にする。清明祭や十六日祭になると墓前に集まり、お墓の中の先祖たちと親しく対話する。表には出てこないが、日常的にユタの教示を受けている人もいる。亡くなった肉親がいまどんなことを思っているのかを知りたいからである。

 玉城陣営の勝因はそうしたウチナーンチュの心情に訴えたことにあるのではないか。いわゆる「オール沖縄」勢力をバックにした選挙戦ではあったが、そうした政党色を意識的に抑えて翁長さんの遺族らを前面に出した。つまり弔い合戦に持ち込んだのである。最終盤に県紙2紙同時に掲載した全面広告でアピールした樹子夫人の言葉に心を動かされた有権者も多かったのではないか。

 それにしても当確が早かった。開票作業開始後わずか1時間半にはほとんどのマスメディアが打ち出していた。票が開き切らなくても事前取材で判断できるし、開票場で作業を見れば分かるからである。NHKが報じた出口調査結果で投票先を玉城さんと答えた人が60%にのぼったという。早い段階で大差がつくことを把握していたことになる。

 ■地方の声聞け

 「基地建設問題は国の専権事項」と政府は言う。これに対して玉城さんは「沖縄のことはウチナーンチュが決める」と訴えて当選した。国と地方自治体は対等であり、国の都合で地方の将来が決められてはたまらない。

 いずれにしろ戦いは終わった。ノーサイドである。政府は8万票を重く受け止め真摯(しんし)に沖縄の声に耳を傾けるべきである。あす就任する玉城さん。近いうちに安倍首相にあいさつに赴くだろう。よもや首相が門前払いをしないようくぎをさしたい。世論が許さないであろう。

 「新時代沖縄」のスタートに期待しようではないか。


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