10月1日に開院する新県立八重山病院(篠崎裕子院長)に直接乗り入れる路線バスの運行が開院日に間に合わないことが26日までに分かった。運行を計画している東運輸㈱(松原栄松代表取締役社長)によると、美崎町のバスターミナルを発着点に新病院と市街地を周回する新規路線の開設を予定しているが時期は「年内」という。バス会社側は市から受託して3月末で廃止された「まちなかじゅんかんバス」のように赤字運行を恐れ、利益面も含めて慎重に調整を進めている。開院後は運転免許を持たない高齢者や離島住民などはショッピングプラザ前が最寄りのバス停となり、約800㍍離れた新病院への通院に不便を強いられそうだ。
新県立八重山病院の開院を受けて市内で路線バスを運行する東運輸は、5月の石垣市バス対策会議(議長・漢那政弘副市長)で現行の各路線に新病院を組み込んだ新たなルートで運行する考えを示していた。
開院日の運行を進めていた東運輸は取材に対し、「赤字運行で廃止した『まちなかじゅんかんバス』の事例から、経路や運行本数、料金設定などの調整が間に合わなかった」と答え、赤字を抑えて利益につながる方向性も視野に検討を重ねている。
これに対して、市の公共交通対策を担う石垣市地域公共交通協議会(会長・漢那政弘副市長)は、市内で唯一の路線バス事業を展開する東運輸が新病院を含めた新規路線開設に理解を示すも、赤字路線となった場合の補助金支出には今後の採算性を見守る考えだ。
事務局の平良守弘市商工振興課長は「企業努力を鑑みながら年度内は赤字算出などの推移を踏まえて(補助金支出を)検討したい」と述べるに留めた。
しかし、新規路線開設まで通院などは自家用車かタクシー利用に限定されることから、波照間島に住む40代男性は「病院を利用する島の人々とタクシーに相乗りする考えもあるが、毎回そうはいかない。低価格なバスの存在は不可欠」と話し、与那国島に住む60代女性は「空港から直接行ける路線も取り入れてほしい。新病院の最寄りのバス停からは距離があり、そこから歩くのは困難」と訴えた。
篠崎院長は「通院患者に影響が出る。路線バスは観光だけではなく、市民の足として早急に運行してほしい」と話した。