八重山3市町の議員選挙は翌日開票の竹富町を含め10日までにすべての議席が決まった。陸上自衛隊配備問題で注目された石垣市議会は与党会派が13議席を占める結果となった。全22議席の過半数にあたる。今後のなりゆきが注目される。
■計画は前進か
議会の勢力図がどうなるかと注目されたのは陸自配備予定地の大半が市有地であることに起因する。配備のために市有地を国に売却するためには手続きとして議会の承認が必要である。与党会派が過半数を占めるということは計画が大きく前進することにつながりそうだからだ。
ただ、ことはそう単純でもないようなのだ。与党のうち組織的にも意志が固いことで定評のある公明党など一部が「慎重姿勢」をとっているからだ。この慎重派が反対に回る可能性がないとはいえないのである。公明党は元来平和を希求する政治団体として知られる。国会同様現在は与党の立場をとっているが、こと平和問題に関しては譲れない一線というものを持っているはずだ。自民党総裁3選が目前の安倍政権がやっきになっている憲法改正にも「もっと慎重に議論を」とブレーキをかける役目を果たしている。
■政治に未来も
ところで今度の選挙戦で気になったのは陸自配備問題で反対の立場を貫くはずの野党候補の動き。3日攻防に突入するなか本紙が実施したアンケートで「選挙戦で重視する分野」を問われていの一番に「陸自配備問題」と答えたのはわずか2人しかいなかったのだ。大半が子育て支援や経済、農業振興、福祉と答えている。これでは本気で陸自配備に反対しているのかと疑いたくもなる。
背景には地域共同体においては高度に政治性を帯びた問題を避けて通りたいという心情がうかがえよう。「難しい政治の話より目の前の生活を楽にしてくれ」という気持ちである。そうした有権者の心に訴えるには「子育て支援」「経済振興」が一番という、いわば戦略である。その証拠に別のアンケートで陸自配備問題に特化されたら、しっかりと賛否、慎重を答えている。
もちろん、政治は生活である。目の前の課題解決に全力を傾けるのはとても大切なことだ。しかし、一方で政治は未来である。来るべき将来の問題を避け現実的対応にのみ心血を注ぐと子や孫の世代に取り返しのつかない負の遺産を残しかねないのだ。
■争点隠す与党
与党候補の選挙戦はどうだったか。徹底して陸自配備問題の争点化を避けたことは明白だ。前述のアンケートでも2番目に重視している人が1人いるだけで陸自配備推進を訴えた人はほとんどいない。つまり立場を曖昧にしている。
本島北部に目を移すと名護市議選で辺野古問題で野党が1議席失い与野党同数となった。ただ、新基地反対の立場をとる公明を加えると反対が辛うじて過半数を占める結果となっている。ここでも渡具知武豊市長は辺野古で賛否を避け、一方で基地交付金は受け取るという姿勢である。
13日に県知事選が告示され、30日には投開票だ。それこそ将来の問題にしっかりと意思表示したい。