■県内景況、過去最高
日本銀行那覇支店はこのほど12月の県内企業短期経済観測調査(短観)結果を発表したが、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は全産業で前期(9月)より1ポイント多い45と2期連続で過去最高を記録。景況感は15期連続プラスが続いているという。
特に好調な観光を背景に消費が好調を持続。プラス70の小売業を最高に運輸、サービス、建設資材、卸売り、飲食店・宿泊、リースの各業種がいずれもプラス50を超えたという。
しかも同支店側によると、「全国的には輸出産業を中心に中国経済の景気失速の影響が出始めているものの、観光が好調な沖縄は絶好調を維持。県内景気が減速する具体的な材料は見当たらず、好景気は今後も持続していくだろう」と分析している。
一方で雇用人員判断DIは過去最低の34となり、景気は好調だが人手不足が深刻という現状が浮き彫りになっている。これは正社員を希望しても非正規で働かざるを得ないなどの雇用のミスマッチが大きな要因だが、この好調な景気を機会に企業側に「雇用の質」を高める努力が求められる。
■2人に1人が非正規雇用
確かに好調な景気を背景に沖縄の有効求人倍率は、10月時点で求人数が初めて1万人を超える1万399人に達するなど0.89倍と3カ月連続で復帰後最高を更新、失業率も4.9%まで改善した。八重山も9月時点で1.18倍と那覇の1.06倍をしのぐ県内五つのハローワークで最高値を記録した。
これは企業の求人が仕事を探している人を上回っていることを示すものであり、同時に八重山経済も新空港開港以来、好調な観光に支えられ、好景気が持続していることを示している。
沖縄の「雇用の質」については、非正規労働者が全国平均38.2%、15歳~34歳の若年は35.3%に対し、沖縄は全体が44.5%、若年は50.4%と全国一高く、さらにシングルマザーも半分以上が非正規と全国最悪だ。その結果高卒の2人に1人が3年以内に離職し、さらに賃金は全国平均が31万4000円に対し、沖縄は24万3000円と7万円以上も安い低水準にある。
夫婦ともに非正規の家庭も少なくなく、結局それが「子どもの貧困」「貧困の連鎖」の悪循環になっている。
■雇用「量」から「質」へ
そのため県も、雇用政策をこれまでの「量」から「質」に転換し、沖縄労働局と共に企業に正社員化などの待遇改善を求めている。
これに対し企業側も人手不足を背景に正社員化したり、賃金をアップしたり、それなりに「質」の改善に努めているが、求人と求職条件が合致しないなどミスマッチでなかなか人手不足を解消できていないのが現状だ。
中小・零細企業が多い沖縄では、企業側が人件費抑制や景気動向を見るため、安価で使い勝手がよい労働力として非正規労働者を、一方では繁忙期の雇用の調整弁として利用する傾向が強いが、こうした企業経営者の意識が変わらないと、加えて行政の支援もないと非正規の正社員化など雇用の「質」は改善できないし、人手不足解消も県内景気も持続は厳しいだろう。