■新庁舎のあり方提言
竹富町の望ましい新庁舎建設の在り方を検討してきた「竹富町新庁舎建設のあり方検討有識者委員会」(上妻毅委員長、委員8人)は23日、川満栄長町長に、新庁舎・支所等の機能分担のあり方として「西表に本庁舎を移転。石垣に支所を新設。各島の出張所の配置、機能を強化」がベストだと提言した。本庁舎の位置を「石垣市に置く」、「西表に移転する」の二つを柱に各島の出張所の機能などを組み合わせた6パターンを設定。8人の委員が「住民の利便性」「地域への貢献」「地域の拠点形成」「効率性」「防災機能」「環境への負荷」の6項目の観点から評価した結果だ。
提言を受け川満町長は「52年間におよぶ町最大の課題を切り開く糸口となる」と歓迎。今後は庁内で提言内容を検討し、各島々で説明会を開いて住民に説明した後、12月議会までに住民投票条例を議会に上程し、本年度内の住民投票実施を予定している。
■課題は交通アクセス
提言では、町が今後策定する「新竹富町役場に関する基本方針(仮称)」で、町内の各島・各拠点間の円滑な移動を支える交通ネットワークの拡充と移転の財源、職員の通勤や居住の意向を盛り込むことを求めた。
離島航路が石垣市を拠点に運航されている現状から、各島々を結ぶ交通ネットワークの構築は以前から指摘されている最大の課題。これが確立できるかどうかが、移転の賛否を左右しそうだ。既存船会社と連携し、実現可能なネットワークパターンを模索し、必要な予算措置を講ずるべきだろう。
提言されたパターンで唯一、点数(最高24点)がなかったのが「環境への負荷」。庁舎の西表移転に伴い、数十人の職員とその家族が西表に定住することで、庁舎や関連施設、職員住居などの建設が発生する。
また、人口増に伴う上水や下水、電力需要の増加が周辺環境に影響を及ぼす可能性もある。貴重な動植物を有する西表だけに、環境への負荷を最小限に抑える努力が求められよう。
■移転計画の速度アップ
竹富町では、町民に移転の賛否を問う住民投票の年度内実施に向け、条例案を12月議会までに提案する方針だ。
だが、移転可否判断は、住民投票の結果に委ねられるだけに、16年度当初で予算を確保し、具体的な取り組みを開始するのは困難だ。
仮に9月議会で住民投票条例を審議、制定し、投票実施期限の60日間内に住民への説明を済ませれば、16年度当初予算に庁舎移転関連予算をスムーズに反映させることが可能。9月議会で議員提案を模索する動きもあるようで、ぜひ検討すべきだ。
一方、市内美崎町の現庁舎は津波浸透区域内にある。津波対策で移転の必要性を町の地域防災計画で位置づけ、同区域外となる西表大原の予定地に庁舎を移転・新築することで国の「緊急防災・減災事業」の活用が可能。起債した移転費用の70%が地方交付税で戻るだけに、活用し、町の負担軽減を図るべきだ。その申請期限は16年度。移転計画のスピードアップが必要だ。