新県立八重山病院の10月1日開院まで1カ月となった。11の有人島を抱える八重山圏域の中核病院として、最新のコンピューター断層撮影(CT)装置など、高度な医療機器を設置することで地域のニーズに即した新たな医療を提供する準備が進められている。診療科では、症状に合わせ全身麻酔を使用しての手術も可能な歯科口腔(こうくう)外科も新設。地域医療の充実を図るために医療機器の導入、医療機能の強化、ホスピタリティーに重点を置き、患者と地域に愛される病院を目指している。
■高度な医療機器導入
同病院は、高度な医療サービスを提供するため、臓器全体の機能診断や被ばくを低減させ短時間での撮影が可能な320列のCT装置、血管内治療に使用される血管造影放射線撮影装置(アンギオグラフィー)、新調した高気圧酸素治療装置、乳がんを検出するための最新のマンモグラフィーなどの医療機器を導入し、需要に対応する。
■歯科口腔外科を新設
現在の23診療科に加え新病院には、歯茎の切開や骨を削ったり切断したりする大がかりな外科的処置を行える歯科口腔外科を新設。
強化される機能は、高度な治療や手厚い看護により重症患者の状態を常時観察できる集中治療室(ICU)、高度治療室(HCU)を増床し患者の受け入れ態勢を向上させる。
周産期医療では、新生児集中治療室(NICU)から継続保育が可能な継続保育室(GCU)を新たに整備。八重山圏域で年間約600件の出産数に対応している唯一の出産可能施設として、機能強化と、さらなる新生児の手厚いケアに期待が高まる。また、陣痛から出産、回復するまでの時間を一つの部屋で過ごせる「陣痛分娩(ぶんべん)室(LDR)」も1部屋設け、妊婦の負担を軽減した出産環境を整える。
最重症な急患・隔離を必要とする感染症に対応した専用経路やエレベーターを設置。当該者は、一般利用者と接触せずに手術室やICU、感染症隔離病棟へスムーズに移動できる。
■ホスピタリティー
院内はホスピタリティーに配慮した造りで、病棟などの照明は落ち着いた雰囲気の暖色系を基調に設計し、広い窓やベッドの配置にも気を配りストレスを感じさせない空間を提供する。一般病棟の個室は58床へ増床し、家族と一緒にゆったりと過ごせる特別室も7床に増やした。
篠﨑裕子院長は「医療人の育成とチーム医療にも引き続き取り組み、患者と地域に信頼される病院づくりを目指したい」と決意を示した。