「石麻呂にわれ物申す 夏痩せに良しといふ物ぞ むなぎ捕りめせ」万葉集で大伴家持が痩せぎすの人をからかった。20日は土用丑▼天平の昔から知られていた鰻の効能である。高タンパク、ビタミンAを多く含む。ところがその鰻を現代日本人は、まだ食べられるのに賞味期限の「食品ロス」として昨年2・7㌧も廃棄したという。環境保護団体が全国の大手スーパーを調査し報告した。何ともったいないことを▼ニホンウナギは過剰な漁獲、生育場や海洋環境変化などで資源量が急激に減少し、14年に絶滅危惧種に指定された。以来お値段もそれこそうなぎ上り。庶民には手が届かぬ高嶺の花である▼昭和期の石垣は鰻が身近な存在だった。初期は名蔵川河口で稚魚を捕獲し、のちに台湾からの輸入で磯辺や白水など養殖が盛んに行われた▼桟橋通りに蒲焼専門店が開業し、たちまち市民はそのおいしさに魅せられた。生産も消費も地元なら当然、安くて旨い鰻蒲焼が食べられたのだ。店周辺では「鰻を焼く香りだけでご飯が食べられる」と笑う人も。残念ながら99年頃登野城田原の養殖場が廃業し、石垣産鰻の灯は消えた▼食品ロスは石垣でもある。鰻好きの皆さん、私たちにできることは何でしょう? せめて資源の無駄使いをなくさなければ鰻に申し訳が立たない。(慶田盛伸)
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