英国は1月、孤独担当大臣を設置した。人口約6500万人のうち900万人が孤独を感じ、友人や親戚と1カ月以上会話していないお年寄りが20万人にのぼるという。その現実に国家的戦略で立ち向かう▼日本ですぐに連想されるのは孤独死。だが、出版界では「孤独」本が急増中。ただしプラス思考、ポジティブ路線が多い。読者層も中高年だけでなく、他人との向き合い方に悩む若い世代向けだったりする▼「孤独のすすめ-人生後半の生き方」五木寛之(中公新書)の「帯」コピーは「人は年をとると孤独という自由を手に入れる」である。現在、書店売り上げ上位に入っているのは、下重暁子著「極上の孤独」(幻冬新書)。コピーは「孤独ほど贅沢で愉快なものはない」▼孤独を恐れるあまり人と群れ、人に迎合ばかりして余計に疲れて寂しくなる。SNSを通じて知り合った者たちが見知らぬ女性を拉致し殺害する。地震などの災害時にデマ、偽情報をつぶやく者も▼スマホを手放せない現代社会への処方箋、あるいは警告なのだろう。無駄な情報を遮断し、自分とひたすら向き合い心を解き放つ。本当は何をしたいか、どうありたいか▼孤独は自由やぜいたく、愉快という提唱。試してみるとしますか。そんなすぐに成熟した境地に立てるか不安は残るけど。(慶田盛伸)
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