政府が世界自然遺産に推薦した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」は残念ながら「登録延期」の勧告となった▼理由は二つ。評価基準のうち「生態系」の持続可能性について「重大な懸念がある」と判断し、「生物多様性」においては沖縄本島北部訓練場返還地の編入など推薦地域の見直しを求めている▼勧告を受けて関係者から「遺産登録までの準備期間」という前向きな声があるのは頼もしい。今年の登録は厳しい状況のようだが、国際自然保護連合は、登録「ノー」といっているのではない。綿密かつ最良な推薦書の再提出などを求めているのだ▼それではどのような取り組みが重要なのか。西表島では、遺産登録に伴う観光客の急増などが危惧されている。保全と利用のルールをどう作るか。これにはガイド認定制度や総量規制導入が暗礁に乗り上げた経験を持つ国内第1号の世界遺産登録地である屋久島に学ぶことも必要だろう▼何から何まで本土並みといったような規制にするのではなく、固有種がきらめき、イリオモテヤマネコの事故死もない、悠々たる琉球弧の歴史が感じられるようなゆったりとしたライフスタイルが本来の姿だと思う▼次代に自慢できるような気宇壮大な遺産登録に向け、平和な環境づくりを真剣に考える世論を盛り上げたい。(鬚川修)
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