漂着ごみの調査・研究を続けている防衛大学校名誉教授の山口晴幸氏(69)が3月9日から4月4日の27日間、八重山諸島の6島38海岸(距離20.28㌔)を調査した結果、人が立ち入らない海岸に昨年の調査で漂着していなかった大量の流木や、有害化学物質を含むとされる青色フロート(ブイ)が棒状1万9362個・たる状2528個も漂着していることが分かった。山口氏は、フロートがプラスチック製と推察し、「マイクロプラスチック化したフロートをカニなどが食べ、島の生物に悪影響を及ぼしかねない」と警鐘を鳴らす。
山口氏は1998年から21年間、琉球列島や八重山諸島の海岸を定点調査しており、海洋を越境する漂着ごみの種類や国籍などをカウントし環境の変化について調べている。
各島でのフロート確認状況は、与那国島10海岸(同2.68㌔)で棒状6394個・たる状751個。波照間島2海岸(同1.2㌔)257個・48個。西表島12海岸(同8.22㌔)7632個・985個。黒島2海岸(2.1㌔)801個・68個。竹富島1海岸(同3㌔)413個・72個。石垣島11海岸(3.13㌔)3865個・604個に達し、中国製が大半を占めた。
山口氏によると、フロートからは鉛や亜鉛などが高濃度で溶出されるという。
このほか流木の実態について、昨年10月以降に東南アジアを襲った台風の影響で、与那国島、西表島、石垣島などの北側海岸域に南方から大量の流木が漂流した可能性を示した。そこへ、年々増大する中国製の漂着ごみが混ざり、状況は深刻化しているという。
また山口氏は、世界自然遺産登録を目指す西表島の北西海岸域に生息するカニや貝の体内からマイクロプラスチック(大きさ5㍉以下の微小プラスチック)が検出されていることから、食物連鎖の頂点に立つイリオモテヤマネコがこうした生物を捕食することを懸念。「プラスチックに含まれる有害物質により奇形が生まれ、種の存続が心配だ」と話した。
紫外線や高気温が漂着プラスチック類をマイクロプラスチックの生成・供給に拍車をかけているとし、「漂着ごみの堆積、放置を防ぐことが大切。国が主導して八重山に漂着ごみ対策の専門組織を設けることが必要」と指摘した。