県内高級魚の一つ、スジアラ(アカジン)の種苗生産技術をほぼ確立している独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所亜熱帯研究センター(照屋和久センター長)=石垣市桴海大田=が、人工飼育されたスジアラで養殖産業化を目指す取り組みをスタートさせている。昨年の恩納村に続き、石垣市で27日、養殖技術セミナーを初開催した。照屋センター長は「養殖産業につなげる第一歩」としている。
センターは1985年度から親魚の養成の技術開発に取り組み、これまでに種苗生産技術をほぼ確立。養殖事業化では、コストを抑えつつ付加価値を高めるため、▽早く成長させること▽鮮やかな色に仕上げること—が必要だが、これについてもメドが付きつつあるという。
石垣市水産課は同センターと技術協力を結び、八島町の種苗供給施設で試験養殖に取り組んでいる。同課は「アカジンは陸上養殖の有望種」(平良守弘課長)として施設整備を目指す。
市内ホテルで開催したセミナーには地元行政、漁業、調理師など関係する人たちを招いた。センターの担当者がスジアラ養殖技術の現状と展望を紹介、「沖縄ならではのインパクトのある魚」と説明した。
セミナーを受け、市はセンターと共催で試食を兼ねた意見交換会を実施。人工飼育されたスジアラを使って調理された11のメニューを食べてもらったところ、好評だった。調理を担当した南の美ら花ホテルミヤヒラ調理部和食料理長の中村伸彦さんも「刺し身、蒸し、揚げなど何でもいける。臭みがなく、素材として使いやすい」と評価した。
照屋センター長は「スジアラ養殖は近い将来、事業ベースにのせることができるだろう。そのためには地元の人たちに養殖技術を紹介し、実際に食べてもらい、養殖されたアカジンを知ってもらう必要がある。これをもとに技術に工夫を加え、よりおいしい魚にしていきたい」と話している。