■舞台に身を乗り出す子どもたち
去る8日の午前、市民会館大ホール観客席を埋め尽くした小学校高学年児童は劇団四季の公演が始まると一気に舞台で展開する物語の世界に引き込まれた。静まり返り、身を乗り出す児童も少なくなかった。固唾(かたず)をのんで見入るがゆえに、いきなりの何でもないダジャレにもどっと沸いた。胸を打つ場面では涙を紛らわすように先に受け取ったパンフレットを丸める児童もいた。
公演中席を離れるものはほとんどいなかったのではないか。引率教師のトイレはすませておくようにとの指導も効いたのだろうが、それ以上に舞台芸術を堪能していたからではなかったか。
そのことを物語るように休憩時間のトイレは男女ともにごった返していた。よほど我慢していたのだろうが行儀よく列をなし全ての便器を効率よく使用していた。そうしないと収拾がつかなくなることをその場の状況から察したのだろう。じっと我慢して自分の番を待つ子どもたちの姿はほほ笑ましくさえあった。
■子どもたちを引き付けたのは
ミュージカルは18人の個性豊かな子どもたちが対立しぶつかり合いを繰り返しながらも次第に力を合わせ、困難に立ち向かっていく姿を描いていた。俳優たちのダイナミックな演技やパワフルなダンスは迫力があった。豊かな声量で明瞭に届くセリフ、伸びやかな歌声もさすがであった。
舞台セットも圧倒的存在感があった。伝説の古代遺跡は夢幻的でさえあり、機関車の発車は臨場感たっぷりであった。それらを引き立てたのが計算された照明であり音響であった。
そういう俳優や裏方の持ち味が存分に発揮された舞台を高学年児童は手に汗を握りながら楽しんだのだろう。歌と身体を動かすのが大好きな子どもたちにはミュージカル仕立ての舞台は親しみやすいという事情もあるだろう。
印象的だったのは(公演の趣旨から当たり前かもしれないが)徹底して子どもたちに寄り添う舞台であったことだ。子どもたちの心に届けとばかりに全力で演じ、演出しているのが手に取るように感じられた。大人からのすてきなプレゼントといえよう。
■感動体験・子どもたちの感想
公演後数人の児童に感想を聞いた。例外なく即答であった。「ダンスと歌声の組み合わせが格好良かった」「遺跡の場面は怖いくらい迫力あった」「実際の出来事を見ているようでハラハラドキドキだった」等。
玄関を出たところに知人の息子がいたのでやはり聞いた。夜遅くまでゲームに熱中し学校を休むことも多いらしい彼も笑顔で「連係プレーでビッキーが助かってよかった」と話した。スマホのゲームとは趣を異にした楽しみを味わえたのだ。
フィナーレで舞台と客席が一つになって歌ったのは「すてきな仲間」であった。涙を浮かべる児童が目に映った。こういう感動体験は貴重だろう。楽しみながらも「仲間の大切さ」「信じ合う気持ち」「勇気」など多くを学んだに違いない。学校でも授業や諸活動の場で感動を生み出すべく一層努力・工夫をしていただきたい。いじめ問題克服に向けても有効に働くだろう。