スズメが少なくなった。本土復帰前はどこでも見かけた鳥だが、街から緑が減り、生息環境が大きく変わったのだろう。このままだと昔話「したきりすずめ」の説明にも時間がかかる▼石垣島には、わずか40年ほどで激減した生物がたくさんいる。代表的なのはゴカイだろう。以前は海岸を少し掘れば簡単に見つかった。最高の釣りエサで、重宝がられた。ところがいまは容易に採れない▼それは、島を囲むように建設された護岸の影響が大きい。海岸線の生態系が遮断され、直立式工法の護岸が建てられると付近から砂が逃げ、階段式工法の護岸建造後は、ゴツゴツしたバラスがたまるようになった▼護岸は過去の日本列島改造論に基づき、国土保全、農地保全などの名目で建設された。行政が最も予算を確保しやすい公共事業で、地域の景気を浮揚した▼その中でも、最も残念な護岸は宮良のムニンヤーの浜だろう。当時、工事は県の土木関係担当課ではなく、林務係が担当。防潮林を造るための護岸造成と聞いて、がくぜんとした▼名蔵湾では護岸造成の影響がよく分かる。砂が沖合に移動し、海岸線はゴツゴツした石が露出、ヒルギを植えてもなかなか成長しない。かつて市観光協会が景観面で市へ要請したことがある。再び環境を取り戻す運動を展開してはどうか。(黒島安隆)
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