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地方自治のあり方を考える

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 ■本土と沖縄の使い分け

 地方自治は、日本国憲法第8章に規定されている。さらにいえば地方分権一括法により、国と地方は「対等・協力」の関係となった。国の優位を否定したはずだ。

 しかし、安倍政権は沖縄県で地方自治を真っ向から否定する暴挙に出ている。辺野古新基地建設と、名護市長選挙、再編交付金や沖縄県への予算配分。それらがセットになった「アメとムチ」である。

 そもそも、辺野古新基地建設反対の民意は繰り返し何度も示されたはずだ。だが、国は昨年4月以降、護岸設置工事を強行してきた。

 普天間基地の県外移設については、すぐに「本土では反対があるため移設できない」と即断即決するのに、沖縄では「基地負担軽減に努める」としか言わない。使い分けである。

 露骨に無視される沖縄の民意。政権は北部訓練場の返還を負担軽減の実績と強調するが、真実は「米軍が使用していない部分の返還」にすぎない。米軍にとっては痛くもかゆくもない。

 ■期日前投票と露骨なアメ

 今回の名護市長選挙の特異な点は、期日前投票の異常な高さであろう。もとより近年はどこでも期日前投票が重視され、石垣市長選挙でも過去2回、それが中山市長の勝利につながったとされる。

 名護では、「投票の自由」は網羅された組織や団体によって徹底して締め付けられた。その結果、期日前に投票した市民は当日有権者数の44・4%。投票者総数では半数を超える57・22%にのぼった。過去に例のない高さだ。

 もう一つの特異点は、基地政策と地域振興を直接的に関連付ける「リンク論」の可視化だ。

 渡具知氏が主張した「基地再編交付金」。第一次安倍政権時の07年に創設され、米軍再編で影響のある施設周辺の市町村に交付される。

 名護では基地容認の島袋市長時代の07年から09年の3年間で17億7000万円が交付されたが、10年に基地反対の稲嶺市長誕生のとたん打ち切った。

 渡具知氏の勝利を受けて、安倍首相は「本当に良かった。名護市民に感謝し、責任を持って応援する」と明言。17年度分から再開する意向を示した。

 また防衛省が県、市の頭越しに辺野古、豊原、久志のいわゆる久辺3区に直接交付してきた「再編関連特別地域支援事業補助金」。過去3年間で2億2000万円交付され、18年度も1億2000万円の支給を予定している。露骨なアメである。

 一方で、沖縄県の18年度予算の骨格が固まった。一括交付金事業減額の影響を受けて2年連続の予算減である。

 基地政策を容認しなければ予算を配分しない。リンク論は沖縄県政と経済界を分断する。一括交付金事業減も県内首長の不満を県政に向けさせ、翁長知事包囲網を形成する狙いだろう。

 ■次は石垣、足元から考えよう

 石垣市長選挙まであと1カ月、市民の選択に注目が集まる。

 争点は中国封じ込めを狙う米軍戦略に沿い、南西諸島に陸上自衛隊を配備しミサイル基地化する国策である。安倍政権は中山氏をテコ入れするとみられる。

 現時点では国防の観点から議論されているが、現実には配備受け入れなら基地交付金がある。税制優遇や住民税増等で自主財源が増え、補助事業もある。

 リンク論は基地経済依存への誘い水だ。いったん受け入れれば、その呪縛から逃れられるか疑問である。

 配備によって、石垣の未来と自治はどう変わるか。市長選挙を自治のあり方についてじっくり見つめ直す機会としたい。私たちの足元から。


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