【那覇】県は21日、デイゴに枯死など深刻な被害をもたらしているデイゴヒメコバチを防除するため天敵・デイゴカタビロコバチを利用した生物農薬の実用化に向けた野外放飼実験を宮古島市の下地島で10月26日から開始したと発表した。島尻勝広農林水産部長は「デイゴは、沖縄の心だ。大切にされてきた県花の復活を期待する」と述べた。22日からは2回目の放飼が行われ、ことし最後となる12月の放飼実験と合わせてカタビロコバチの越冬状況や寄生状況などを取りまとめ、生物農薬登録を申請する。
従来のヒメコバチ対策は、県森林資源研究センター(寺園隆一所長)が開発したアトラック液剤の樹幹注入で実施され、竹富島では島内約100本のデイゴがヒメコバチ侵入以前の開花率に戻るなど成果を上げている。
一方、県内には約10万本のデイゴが植えられており、2014年の調査では平均開花率が7・5%とヒメコバチ侵入前の02年の54・7%から大幅に悪化。薬剤注入法は効果が高い半面、コストの高さが課題となっていた。
県は、薬剤注入と比較して天敵生物による防除経費が15分の1に抑えられるほか、カタビロコバチが野外で定着した後の追加経費は、ほとんどかからないと試算する。
放飼実験の行われた下地島にはデイゴが約20本あり、その内の7本に対して1回の放飼で1本の木につき約20~50匹のカタビロコバチが放たれた。県では、実験が開始されたデイゴカタビロコバチによる効果がはっきりと見えてくるのは2~3年後と予測しており、今後は、農林水産部と環境部が連携しながら発生調査を取りまとめていく。同センターでは、状況が整い次第、八重山を含め県内各地で活用したいとしている。
県内では、過去にウリミバエを根絶した不妊虫放飼や菊などにつくマメハモグリバエの天敵ハモグリミドリヒメコバチなどが生物農薬として成果を上げており、同センターの寺園所長は「沖縄の県花デイゴに鮮やかな紅色の花が毎年見られることを期待する」とカタビロコバチの生物農薬登録を目指す。
今回、導入されるカタビロコバチは体長2㍉。ハワイでは、すでに生物農薬として活用されており、同センターの殺虫効果試験でもヒメコバチの数を50~60%減らす効果が見られた。
害虫ヒメコバチは、体長1・5㍉。2005年5月に石垣島で初めて確認された後、1~2年で県内全域に分布を広げた外来種。侵入経路は分かっていない。