久しぶりに海風を吸いながら海岸を散策。風は少し冷たかったが、うるずんの季節の到来を感じた▼八重山独特の美しい響きの言葉「うるずん」は旧暦の2、3月。新暦では3、4月ごろで野山には新緑が芽吹き、テッポウユリやデイゴの花が咲くシーズン▼海岸の岩場には最盛期はもう過ぎたが、きれいな緑色をしたアーサが繁茂していた。ヒトエグサという和名の海藻で磯の香りあふれる島の特産品だ。季節物だが乾燥物や冷凍され一年中出回っていて、いつでも食べられる▼細かく切った豆腐を入れた澄まし汁が代表的だが天ぷら、つくだ煮、ヒラヤーチーや卵焼き、茶わん蒸しや雑炊に入れてもいいし「島の食べ物だなー」と思う▼ビタミンとミネラルの宝庫で、整腸作用のある食物繊維を多く含み、新陳代謝を促進、血液の流れをスムーズにするなど、こんなに栄養豊富とは。老化防止やがん予防にも効果的で夏が近づくこの時期、女性だけでなくお年寄りにも最適だという▼でも最近は海岸でアーサ採りをする人々の姿が少なくなった気がする。また「島の人よりよその人の方が特産品の良さや、活用法を知っていて逆に教えてもらうことも多いよね」という話も聞く。身近な自然の恵みや島の特産物を島の人々がもっと愛用していかなければと思うのだが。(辻本順子)
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