2016年度に八重山管内で寄せられた児童虐待の相談件数が前年を12件(66・7%)上回る30件に増えていることが、県八重山福祉事務所(伊波盛治所長)のまとめで分かった。過去5年間では121件、年平均でみると24件と推移。相談では、親が子どもの目の前で配偶者や親族らに暴力をふるうことで心理的虐待を与える「面前DV」が増加しているという。昨年度からの件数増加に同所は「周囲の『見える化』によって相談が表面化したが、無くならない児童虐待に苦慮。関係機関による公助、家庭や地域の共助づくりが課題」と指摘している。
同所によると、2012年度から16年度までの5年間で郡内から寄せられた児童相談総件数は908件あり、年平均で181・6件。16年度の児童相談総件数175件のうち児童虐待の相談は30件で、南ぬ島石垣空港が開港した13年度の34件(児童相談総件数196件)に次ぎ2番目に多い。14、15年度は減少傾向にあった。
同所は新空港の開港で八重山の景気が上向きになる一方、子どもの貧困問題や母子父子家庭の子育てに関する孤立などが改善されていないことを指摘。開港翌年度の14年度は児童相談総件数が200件を突破しており、「好景気の半面、相談は多く、不安定な社会環境にある」と分析する。
児童虐待の区別は「身体的虐待」、育児放棄の「ネグレクト」、「性的虐待」、「心理的虐待」だが、相談が増えている「面前DV」も児童虐待防止法で児童への心理的虐待に位置づけられる。全国では16年度の相談件数のうち、心理的虐待が6万3187件で最も多かった。
同所に寄せられた相談内容の一部によると、ひとり親家庭で児童扶養手当を受給しても経済的理由で子どもを保育園に預けることが困難な場合や、八重山への移住者が結婚後に親権を取って離婚するなど家庭環境の変化を強いられる場合に、児童虐待を引き起こすケースがあるという。
1日から始まる「県子ども虐待防止推進月間」を前に伊波所長は「数字では表れにくい性的虐待もあり、児童虐待は周囲の気付きが重要。孤立している家庭環境や児童の変化を察知して、深刻な事態に陥る前に防止したい」と危機感を募らせた。