落ちても落ちても決して諦めない。今度こそはという決意で挑戦する姿が見るものを熱くさせた▼キックボクシングで頂点を極めたISKA世界ライト級王者の廣虎(ひろと、本名・根間裕人、33)=石垣市大浜出身=が正式に現役を引退した▼廣虎は一発KOの左フックを得意とするファイターだった。16年の選手生活で45戦25勝(16KO)19敗1分けの成績を収め、2階級制覇をはじめ国内外合わせて七つのタイトルを獲得。幾多の苦難を乗り越え、4度目の挑戦で念願の世界王者になった▼3年前、世界に初挑戦した廣虎を沖縄市のリング下で取材した。初めて経験するキックボクシングの国際試合。鍛え上げた肉体が激しくぶつかり合う強烈なキックとパンチの応酬、衝撃的だったあまりの迫力にカメラのシャッターを押すのではなく、カメラ自体を押してしまった失態が今もって鮮やかに思い出される▼どん底からはい上がり、遅咲きの花を咲かせた廣虎。引退会見で「後悔はない。それくらいやり切った気持ちでいる」と言い切った。競技者として決して諦めない心で日々努力すれば、道が開かれることを身をもって多くの人たちに伝えてくれた▼今後は後進の指導などに当たるという。世界の頂点を極めた男がどのような活躍をみせてくれるか期待したい。(鬚川修)
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