本紙連載の当間修一氏の「やいま千思万想」を楽しく拝読。音楽を通して氏が感受された八重山の風物、人情、歴史などの感想を背景にしてのおだやかな主張がこころよい▼最近の3回は本土の古典音楽と対比しての八重山古典についての分析で教えられるところが多かった。本土の古典音楽は「家元制度」によって継承され、それは家元の権威を守るというような意識もあってその節回しや発声の揺らぎなどは高度に洗練され、その家元に入門し精進を重ねた一部の継承者でなければ演じることのできないものとなっている▼しかし八重山の歌には揺らぎやくぐもりがなく、発声は明るく誰にでも歌え誰にでも継承される要素が多いとのこと▼氏はつねづね「伝統というものは特別なものではなく、生活の中で息づき日常の普通の営みとして誰もが何時でも何処でも演じられるものとなってほしい」との願いを持っておられる▼そしてそのような伝統が継承され八重山というアイデンティティーを確認しあい、心をつなげ幸せを共有する。そのためには社会的ゆとり、時間と余裕つまり「平和」こそがもっとも大切だと強調される▼指揮者としての長い音楽経験から寄せられたこの鋭い分析と八重山への柔らかいメッセージが誠にありがたく思われた。
(八重洋一郎)