与那国島への陸上自衛隊沿岸監視部隊配備に伴う建設予定地(町有地)の一部について、所有物件の補償交渉を行っていた沖縄防衛局と、土地を与那国町から借りている農業生産法人㈲南牧場(大嵩長史代表取締役)は、補償額で折り合わず、交渉が決裂したことが11日、分かった。同牧場の大嵩代表は「われわれの提示額を受け入れられないのであれば、今後も交渉には応じられない」と、譲歩する考えがないことを示している。一部で代替地を模索する動きも出ている。
大嵩代表によると、沖縄防衛局側から提示された補償額と同牧場が提示した額に隔たりがあり、防衛局側が金額見直しに難色を示したことから、大嵩代表は「これでは交渉は無理だ」と、5日に防衛局の担当者に、今後の交渉に応じないことを伝えたという。
南牧場では、体育館などの施設が予定され、隊舎や監視施設といった部隊の重要施設計画地ではないことから、代替地で建設が進められる可能性もある。すでに代替地を模索する配備賛成派の動きも見られる。
与那国防衛協会の糸数健一副会長は「自衛隊配備の場所については国が決めること。一日も早い配備を求めていくだけ」と述べるにとどめた。
予定地変更の可能性について与那国改革会議の崎原正吉議長は「南牧場が取得できなければ、北側のインビ岳周辺の町有地が代替地となる可能性がある。そうなれば、そこに生息するヨナグニマルバネクワガタなど希少種の自然環境を守るためにも反対していきたい」と話した。
防衛省と町では、昨年6月に町有地賃貸の仮契約を締結。配備予定地の一部は㈲南牧場が町から借りており、本契約を結ぶ条件として、同牧場との賃貸契約解除と防衛省による所有物件などの補償が付記されている。