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自衛隊配備、強行するな

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■「合意得られた」は疑問

 外間守吉町長は去る4日の町主催初の住民説明会を受けて、「有権者の約1割が参加し、町民の合意形成は得られた」としてあらためて自衛隊の配備計画を予定通り進めていく考えを示した。果たして町民の合意は得られたか。それは疑問だ。約1時間45分に及ぶ説明会は、反対派からの相次ぐ質問ややじで会場が一時騒然となるなど、溝の深さがあらためて浮き彫りになったからだ。

 人口1500人余の国境の小さな島は今、自衛隊の配備をめぐり、町をはじめとする推進派と反対派の住民同士が根深く対立する不幸な状態にあるといえる。昨年8月に3選された外間町長と反対派の票差も、前回の103票がわずか47票差に縮小するとても民意は得られたといえないものだった。

 それを町長は反対住民の声を無視して強行するというのだろうか。すでに防衛省は駐屯地部隊の隊舎建設などに向けた実施設計を発注し、事業は事実上進んでいる。そのまま強引に進めれば対立がエスカレート、着工段階で混乱し不測の事態も懸念される。

 

■町長こそが思考停止?

 外間町長は説明会で、人口増や公的施設の整備など自衛隊配備のメリットを挙げて、「自衛隊と共存する」与那国の新たなまちづくりビジョンを策定する方針を示し、さらに自衛隊配備反対論に対し、「軍事アレルギーは思考停止を生む要因の一つ」と批判、自衛隊に理解を求めたとされる。

 しかしそこで思うに、米軍基地や自衛隊反対などの軍事アレルギーは、20万人余の犠牲者を出した“沖縄戦”を経験した県民として当然であり、それは世界平和を希求するうえで誇りとすべきものでもある。逆に言えばそれはかつて軍備に反対し、今は離島防衛の最前線となる自衛隊誘致に前のめりとなり、あげくに町の活性化を自衛隊にほぼ全面依存する町長こそ、思考停止状態に陥っているように見える。

 それは3期目を迎えた外間町長の過去2期の実績といえば、町最大の課題である人口は1500人余まで減少。さらに観光産業は石垣が94万人と過去最高の入域に対し、逆に年間わずか2万6千人と低迷、基幹産業のキビも3600㌧に減少、製糖工場の建て替えも不安視される状況にあるからだ。

 

■混乱招く強行避けよ

 国境離島に対する国や県のあまりの冷たさに、町長には同情すべき点も少なくなく国・県に大いに不満はある。しかし、それにしてもその重要課題の振興策が中途半端なのか、あるいは近年の与那国といえば「自衛隊の島」がマイナスイメージになっているのか、前述のように結果は出ていない。

 その焦りが保身となり、「自衛隊依存」となったのだろうが、しかし過疎の島での150人の隊員とその家族の影響力は大きく、依存が強すぎると自衛隊と「共存」どころか「自衛隊に支配される島」になる恐れは十分だ。

 町長は自衛隊配備のデメリットは反対派との軋轢(あつれき)だけとし、今後も粘り強く理解を求めていく姿勢を示していたという。それが本心なら島の人たちの亀裂を広げ、混乱と不測の事態を招く強行は絶対に避けるよう町長にその努力を期待したい。


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