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震災と原発規制を考える

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■過去に例がない地震

  九州の大地の震えが止まらない。熊本・大分両県を中心とした震災「熊本地震」は、14日の前震、16日の「本震」以降、やがて1カ月になろうとしている。過去の常識を覆して大きな地震が2回起こり、さらに震源が南阿蘇、大分県まで広域に広がる「過去に例がない」震災である。

 いまだに避難所暮らしや車中泊を続ける被災者のことを考えると、胸ふさがれるばかりだ。一日も早い生活再建を祈りたい。

■規制委は自然を畏れよ

 国内で唯一稼働している九州電力川内原発2基は、鹿児島県西部、震源域から約90㌔に位置し、M7・3のすさまじい揺れがあっても稼働を続けている。

 周辺住民の不安に対して、本震2日後の4月18日、国の原子力規制委員会が臨時会を開き、川内原発について「安全上の問題はない」として、停止不要との考えを示した。揺れる大地に、自然への畏怖はないのか。科学技術を妄信し天を恐れぬ行為としか思えない。

 大分から四国北部、さらに近畿地方へは、世界でも第一級の「中央構造線断層帯」が通っている。その長大な断層帯に四国電力伊方原発が位置し、7月下旬の再稼働が予定されている。南海トラフ巨大地震の震源域でもあるのにかかわらずだ。再稼働に不安が広がるのは当然だろう。

 規制委は伊方原発についても「中央構造線は審査で十分検討した」として、問題ないとの認識を示している。災害は常に想定外である。

 私たちはみてきたはずだ。5年前の東日本大震災では、東京電力福島第1原発がメルトダウンして史上最悪レベルの甚大事故となった。1市6町村が今なお帰還困難地域である。福島県では県民の5%にあたる約10万人がいまだに避難生活を余儀なくされている。安全神話は崩壊した。

 思い起こしてほしいのは、国も、東京電力も、規制委を含む「原子力ムラ」の人たちも、だれ一人として、事故の責任をとっていないことだ。仮に今後、川内原発や伊方原発で事故が発生しても、誰も責任をとらないだろう。

 福島第1原発は、廃炉の見通しがまったく立っていない。汚染水の流出も止まっていない。県民は住む家を失い、帰るべきふるさとを失ったまま。

 国は40年前後の老朽化原発は廃炉にし、他の原発については順次再稼働させる方針だ。核のごみ問題や燃料リサイクル頓挫など、懸案事項はいずれも未解決である。 

 チェルノブイリ事故から30年。事態は収束にほど遠い。福島原発事故を契機にドイツは2022年までに全原発を廃炉にする「原発ゼロ」を決めている。

■関心持ちたい原発のゆくえ

 幸い、沖縄には原発はない。だが、県民が放射能の恐怖と無縁かと言えば、そうではない。

 隣国・台湾には台湾電力公司第1、2原発4基が北部にある。石垣島まで約250㌔の距離である。さらに建設中だった第4原発が住民投票により建設凍結された。理由は日本と同様、地震多発地帯であることだ。

 今月、新政権を発足させる民進党の蔡英文次期総統は、25年までに稼働中の全3カ所6基の原発を停止させる方針を示している。それまでの間、台湾に大地震がないことを祈るばかりだが、去る2月にM6・6、震度6の南部大地震が発生した。

 原発は、遠いどこかの問題ではない。日本はどうあるべきか関心を持って、国や再稼働をめぐる住民訴訟などの動向を見守りたい。


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