「島がつぶれる」。陸上自衛隊沿岸監視隊が配備された与那国島は今後、どうなるのか。元町長の入仲誠三さん(85)に聞いたところ、即座にそんな答えが返ってきた▼先月27日、祖納集落に入仲さんを訪ねた。73歳のときに咽頭がんで声帯の摘出手術を受けたため、声が出ない。筆談を交えての会話。「私はもう死ぬからいいが、後のことが心配だ」。島の行く末を憂える言葉が続いた▼冒頭の発言の真意は何だったのか。自衛隊問題であれ何であれ、島が二分した状態では、まちづくりは難しいということ。住民同士のいがみ合い、対立…。島社会の人間関係がぎくしゃくすると、一致協力の機運を醸成するのは難しい▼かつて石垣島でも似たような問題があった。新石垣空港の建設位置をめぐってである。白保で、宮良で。もし、あのとき、白保あるいは宮良で、建設を強行していたらどうなっていただろうか。市民全体で開港を祝うムードは生まれなかったはずである▼現在に目を転じると、国が防衛上必要とする自衛隊配備計画をめぐって二分する状況ができつつある。住民が必要とした新空港建設では、県が決めた場所ではなく、住民自ら選択した場所で合意をみた▼しかし、自衛隊問題は、どんなに議論を尽くしても、折り合いはつかないだろう。そこがやっかいなところだ。(比嘉盛友)
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