サンゴを捕食して被害を与えるオニヒトデは、海中を浮遊する幼生期に特定の場所で高密度に分布することが分かったと、国立研究開発法人水産研究・教育機構西海区水産研究所と国立大学法人宮崎大学が19日、発表した。幼生の高密度集団の発見は世界初。「オニヒトデの大量発生のメカニズムを解明する上で重要な一歩になる」と期待している。
両研究機関は2013年6月、石垣島と西表島に広がる日本最大のサンゴ礁石西礁湖で、東京工業大学と共同して16地点で海水を採集して調査。幼生は形態で特定するのが難しいため、DNA判定技術で幼生の特定を進めた結果、礁湖の内側と外側を結ぶ西表・小浜間のヨナラ水道で1立法㍍当たり53.3個体の高密度集団がみつかった。
その他の採集地点では0個体か1個体であったため、オニヒトデの幼生は極めて集中的に分布していることが示唆されたという。
さらに高密度集団の94%以上が、着底して稚ヒトデになる寸前のブラキオラリア幼生だったことから、これがそのまま着底して大量発生の引き金となっている可能性も明らかになったという。
同研究所亜熱帯研究センターの鈴木豪研究員は今回の研究結果について「海水をすくい取って簡単に幼生がいるかどうか判定する技術の開発につながる。そうなれば大量発生の早期警戒システムがつくれる。また、着底寸前のブラキオラリア幼生が大量に着底する場所を特定できるようになれば、大量発生の対策が打ちやすくなる」と話している。
今回の調査では、30地点で植物プランクトンのエサとなる栄養塩や植物性プランクトンの密度も測定したが、今回発見した幼生の高密度集団との直接の関係性は確認できなかったという。
海外の研究結果では、陸域からの栄養塩で幼生のエサとなる植物性プランクトンが増えることが大量発生につながっていると考えられている。