昨年暮れ、安倍首相は突然靖国神社を参拝し中国、韓国などを刺激し、しかもそれはバイデン米国副大統領の懸念を振り切っての行動であることが分かった▼先般、国会でそのことを問われて首相は日米同盟にはなんら影響しないと答弁していた。他人を傷つけて傷つけるつもりはないと言い、忠告を無視して影響はないと言うのだからこんな独善的なことはない▼首相の言動を見ていると私はいつも80年前、国際連盟の「満州国」否認決議に対抗してその総会を退場した松岡洋右(まつおかようすけ)首席全権を思い出す。その時の映像を何度も見たことがあるが、その少し上気した自信満々の姿が忘れられない▼彼は当時、軍部や右翼から「ジュネーブの英雄」ともてはやされたそうだが、彼のその時の行動で日本は一挙に世界から孤立したのである。そしてヒトラー、ムソリーニなどと日独伊三国同盟を結び、第2次世界大戦、太平洋戦争の敗北へと追い込まれる▼自信がありすぎ他からの批判を受けつけない指導者は危険である。その言動でもろに影響を受けるのはわれわれ一般市民なのだ▼例えば、台湾との漁業交渉に際して安倍首相が発した「今度は沖縄に泣いてもらおう」という一言が現在、沖縄八重山の漁民を大きく苦しめているのである。(八重洋一郎)
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