今年もまた深い悲しみと悔しさ、二度と同じような甚大な犠牲者を出さないためにも忘れてはならない記憶が目に浮かぶ▼波高10㍍以上、最大遡上(そじょう)高40.1㍍の巨大津波が発生し、死者・行方不明者1万8456人を出した東日本大震災から11日で5年の節目を迎える▼当時、テレビの画面にリアルタイムで映し出された壊滅的な被害の数々。巨大地震と大津波、それに伴う原発事故など想定外という自然災害の恐ろしさを前にしてぼうぜんとなった。犠牲者の死因のほとんどが津波に巻き込まれたことによる水死だった▼死に至った経緯は、津波と共に押し寄せた大量の砂や海底のヘドロ、港湾施設の重油などの有害物質が体内に入り、呼吸困難になったり、がれきが当たり気を失ったのだろうか、3月の雪の舞う中で低体温を伴って死亡したことが考えられている▼毎年3・11が近づくたびに遺族らは失った大切な人への思いを込めて祈りをささげる。遺族の中には、夢に出てくる妻や娘を思いながら「心の支えは何もない」と孤独を抱える▼自然の脅威。最近では地震学者らの間で歴史から学ぶ研究が広がっている。八重山でも1771年に明和の大津波が発生した。災害は忘れたころにやってくるともいう。防災は普段からの心がけが重要であることを心したい。(鬚川修)
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