7日に行われた石垣市の新庁舎建設位置に関する住民投票では、有権者は大差で旧空港跡地を選択した。市民の大多数が防災面や建設コストを重視し、旧空港跡地を支持したとみられる。市役所が旧空港跡地に移転すると、港を中心としたこれまでのまちづくりは大きな転換点を迫られる。中山義隆市長がどのような決断を下すのか。市役所が移転した場合の美崎町再開発にも注目が集まっている。
■偏り少ない位置
建設位置をめぐっては、市街地中心部にある利便性や港を中心としたまちづくりの推進を求める現地派と、防災面や緊急防災・減災事業を活用することで建設コストを圧縮できるとする高台派で意見が分かれていた。
旧空港跡地を推す市民からは「(旧空港跡地は)開放感がある」(野底の50代女性)、「石垣島全体を見据えた将来性」(大浜の66歳男性)などの意見もあった。現庁舎の狭さから、より広い敷地を求める声も多かった。島内全域のなかで地理的に偏りの少ない位置が選択されたという側面もあったようだ。
■懸念される美崎町開発
旧空港跡地に市役所が移転した場合の美崎町再開発については、新庁舎基本計画策定委員会でもたびたび取り上げられてきたが、市当局は「庁舎の建設位置が決まってから検討したい」としてきた。
公募市民で同委員会に参加し、高台移転を主張してきた新城純氏は住民投票の結果を受け、「旧空港跡地に庁舎を移転するのであれば、美崎町再開発を優先して進めるぐらいの取り組みが求められるだろう」と話す。
美崎町で飲食店を経営する40代の男性は「市役所は高台で良いと思うが、現庁舎の敷地が空くならショッピングセンターなどそれなりの施設を誘致してほしい」と要望する。
■投票疑問視する声も
無効票は150票。このなかには、住民投票条例を審議した際に選択肢から除かれた「八重山病院跡地」を求める内容もあり、「現庁舎敷地」と「旧空港跡地」の両方に「×」を付けた投票用紙もあった。
投票率は40%に達せず、「なんのための住民投票なのか」(武内憲治美崎町自治公民館長)と住民投票そのものを疑問視する声も。
住民投票条例を提案した市議会新庁舎建設に関する調査特別委員会の伊良皆高信委員長は「周知不足の面は否めず、もう少し議論する猶予が必要だったと感じているが、直接、市民に意思表示をしていただくことで民意を確認することができた」と話す。
住民投票の結果に法的拘束力はないが、市自治基本条例では市民、市議会、市長は住民投票を尊重するとされている。中山市長がどのように判断するのか注目が集まっている。