装飾と演出でこうも変わるのかと感心する。香港名物の水上レストランのことだ。真っ黒に汚れた昼間の湾を見ると、なかなか食欲なんて生じない▼ところが夜になるときらびやかな明かりがつき、怪しくキラキラと光るボートで沖合のレストランに向かう。いつの間にか臭い臭いにも慣れ、派手な造りと豪華な料理で多くの客を魅了している▼さらに決してきれいとはいえない街も、夜になると一転して高層ビルが美しい光を放ち、その光景は百万ドルの夜景と言われる。弱点を逆転の発想で魅力に変えてゆく人々のパワフルさには舌を巻く▼石垣島を訪れる多くの観光客が自然豊かで美しいという。だが冬場に船で島の沖合に出ると、臭い。北風で時には街全体から悪臭がする。下水道整備がかなり進められているのに、臭いはあまり変わらない▼優れた自然のもとにいると、居住区の環境にやや鈍感になりがちだ。しかし臭いに敏感な観光客も大勢いる。これまで街を散策して不快感を覚えた人も少なくないだろう▼環境が悪いと、それを克服しようと必死に努力する。だが石垣市はどうだろうか。街づくりに定期的な臭い指数調査はどうか。悪臭の原因を突き止め、改善を図るのも大事だ。これも観光地の重要な要件だろう。(黒島安隆)
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