■脅威論あおる市長を敵対視
去る11日に閉会した9月定例市議会は、予想通り石垣市への自衛隊配備をめぐり活発な論戦が交わされた。その中では来年初めて石垣に寄港予定の中国からのクルーズ船が、中国政府の圧力で寄港できない恐れがあるとの問題が取り上げられた。
中国からのクルーズ船は、毎年台湾人観光客を石垣に運んで来るスタークルーズ社が初めて来年7月から10月まで34回寄港を計画しているもの。この報道に市内の商店街は、本土で“爆買い”する中国人観光客の経済効果に早くも大きな期待を高めていた。ところがこの寄港に中国政府が尖閣諸島問題をめぐり圧力をかけている情報があると与党議員が明らかにしたのだ。
中山市長は野党の前津究氏の質問に「宮古も自衛隊の配備計画があるし、石垣に自衛隊が配備されるから宮古に寄港をシフトするのは当たらない」と反論したが、しかし本当に圧力があるなら、それは中山市長をはじめとする市議会与党の対応や言動に原因があるとみるべきだろう。
それは尖閣諸島所在の自治体として今にも中国が尖閣や石垣に攻めて来るような脅威論をしきりにあおり、敵対視しているからだ。これに中国も敏感に反応しているということだろう。
■尖閣購入に真っ先に同調
5年前までの革新市長時代と違い、保守市政の中山市長や市議会与党は中国に対し極めて強硬だ。
現在日本と中国は尖閣諸島の領有権をめぐり緊張関係がピークにある。それは2012年9月の「国有化」が大きな分岐点だ。その国有化のきっかけが同年4月の石原都知事の尖閣諸島買い取り問題であり、これを真っ先に歓迎し賛同したのが中山市長だ。
市議会も国が買い取りの意見書を与党の賛成多数で可決。市長は尖閣寄付金基金も設立したが、その1300万円余の寄付金はどうなっただろう。
いわば現在の中国公船による連日の尖閣諸島の領海侵入などは、同都知事や市長らの言動が中国のさらなる強硬姿勢の口実になった。石垣など南西諸島の自衛隊配備もそうなるだろう。
しかし、それを市長や市議会与党は逆手に取って、安倍政権と同様今にも中国が攻めてくるような「中国脅威論」を盛んにあおり、市長らはその「抑止力」として安保法制や普天間飛行場の辺野古移設、自衛隊配備の必要性を強調し、アピールに利用している。それは宮古島市をはじめ県内の同じ保守系自治体と比べても突出して目立つ。
■市長は言動に注意を
タカ派の安倍政権と同一歩調を取るこうした中山市長の強硬姿勢は、今年9月の日本記者クラブの会見で内外に発信された。もしこうした市長らの姿勢に反発して中国政府がクルーズ船を石垣に寄港させないとするならそれは八重山経済に大きな損失だ。
敵対視は相手にも敵対視を生むものであり、武力で問題が解決できないことは世界の戦争が物語っている。
安倍政権には多くの人々が戦争への恐れを示しているが、石垣市でも安倍政権に同調する中山市長に不安は少なくない。市長は市民にリスクや経済的損失を与える言動は慎むべきだ。