渇水時に西表島浦内川から取水する竹富町の導水管敷設工事に対し、日本魚類学会自然保護委員会(委員長・森誠一岐阜経済大学教授)は、工事が実施されるマリユドゥの滝付近の水域にウラウチフエダイなど環境省のレッドリストで絶滅危惧—A類に指定されている魚類が23種生息していることから、工事がこれらの魚類の生態に影響を与えかねないとして、浦内川からの取水以外の代替策の検討などを求めている。
同工事は昨夏の干ばつの緊急対策として11月の町議会臨時議会で承認。渇水時に浦内川から上原の浄水場に取水ポンプで1日500㌧を送水する計画。
工事は5月1日の町議会臨時議会で可決された。すでに着工しており、陸上部分の進捗(しんちょく)状況は5月末で31.8%。7月末までの工事完了を目指している。
町水道課によると、常時取水するのではなく、渇水時に取水するほか、河川の水量が多い時期に、施設の通水確認のために月1~2回の取水を予定している。
宮良用和課長は「浦内川の水量は1日約2万8000㌧で、500㌧の取水は大きな影響を与えないと考えられる」と述べた。
日本魚類学会では、5月28日付で竹富町と環境省那覇自然環境事務所に浦内川に生息する絶滅危惧種の重要性、環境への影響の有無、代替策など10項目にわたる質問状を送付。
那覇自然環境事務所は今月9日付で回答し、「緊急時に即応できる取水のための施設設置は島民の生活に必要であり、風致上の支障は小さい」として、施設設置を許可した理由を説明している。
町は6月定例会終了後、20日ごろに回答する予定。
日本魚類学会会員の笠井雅夫さんは「川はとてもデリケートなもので、少しでも環境が変化すれば影響が出てくる。絶滅危惧種の魚類をはじめ、多くの希少な生物が生息する浦内川は世界の宝。町だけの判断で手を加えていいものではない」と話している。
同事務所では工事について、「風致に配慮し、環境への影響が最小限になるよう竹富町と連携・調整していくとともに、魚類の保全も図れるよう、関係者などにアドバイスを受けることが重要」としている。
取水については、住民への説明や渇水期の水位変動のモニタリングの実施、専門家の意見などを得て慎重に行うとしている。