出勤途中に友人の親とすれ違った。ドキッ!とした。認知症を発症したと聞いていたからだ。「おばさん」と声をかけると、「久しぶりだね~」との声が返ってきた▼「大丈夫だ」と思いつつも、気になる。悪いと思ったが、別れたあとにUターンして後をつけた。車をゆっくり走らせ、自宅に帰るのを確認してから会社へ向かった▼かなり以前の話だが、認知症の親がいる友人が「普通の仕事ができない」と嘆いていた。母親が外出すると家に戻れず、街をはいかいするらしい。「体は元気だから、どこまでも歩く」と言い、昼夜問わず、外出した親を家族総出で探すことも▼先日、「認知症SOSネットワーク」が発足した。認知症の高齢者などが行方不明になった場合、石垣市地域包括支援センターが、警察や消防、コンビニなどに情報を提供し、連携して捜索を行うという▼石垣市で認知症として介護認定を受けている人は1213人いるという。その数倍もの家族の心労は大きい。最近は老々介護の人々も増えており、妻や夫がはいかいすると疲労困憊(こんぱい)してしまう▼認知症を患う家族がいる世帯の精神的負担は大変なものがある。昔は隣近所の人が認知症の人を連れ帰ってくれた。強固な地域サポートがあったのだ。今後の認知症SOSネットワークの機能発揮を期待している。(黒島安隆)
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