■口やあご、顔の専門科
3年後の17年4月開院をめどに移転新築計画が進む県立八重山病院(依光たみ枝院長)に、歯科口腔外科の新設を求める声が急浮上している。これまでたびたび必要性を訴えてきた八重山地区歯科医師会(砂川和徳会長、10医院)が、新病院開院までの設置に向けて昨年暮れから各歯科医院や福祉施設でおよそ3000人を目標に署名運動を行っており、今月中には県知事や県議会議長あてに要請を行う考えだ。
同科の新設は昨年12月25日に発表された新病院基本構想からは外れ、今年6月をめどに策定される基本計画の中で引き続き検討が進められることになった。昨年5月に移転新築したお隣の宮古病院は既に設置されている。八重山も新病院開院時と言わず、1日も早い開設を求めたい。
同医師会によると歯科口腔外科は歯だけでなく、舌や咽頭などのがんや交通事故などのけが、口臭症、口内炎など口の中やあご、顔その周辺に発病したすべての病気を診療する専門科だ。
■地元で安全安心の診療を
市内には5カ所の歯科医院に専門の口腔外科医がいるが、開業医にはどうしても限界があり、手術のために沖縄本島に行く八重山郡民の精神的・経済的負担は重い。そこで「地元で安全安心の診療を受けるため」あるいは「地域医療の質を改善し地域完結型の医療のため」(砂川会長)これまで何度も八重山病院に口腔外科の開設を訴えて来たが、現在まで実現していない。
口腔外科開設のメリットは、簡単な手術は本島に行く必要がないし、現在年1回県が専門医を招いて行っている障がい者の全身麻酔による歯科治療がいつでも受けられる。
加えて病院内の他の診療医との連携で高血圧や糖尿病、心疾患、腎不全など重い生活習慣病患者などの歯科治療が安全に行えるだけでなく、各種の手術や放射線治療、化学療法の前に歯や歯周病の処置を受けることでその影響や悪化を防ぐことができる。
さらにこうした専門医の口腔ケアで誤嚥性(ごえんせい)肺炎を予防できるし、何より私たちの健康や身体のバランスに影響するかみ合わせやしっかり食事ができる摂食機能の維持改善のために、ぜひ八重山病院に必要な専門科だ。強く開設をお願いしたい。
■新病院建設に懸念も
これに対し県立病院課は、新たな診療科開設には医師の確保など課題が多くなお検討が必要としているが、依光院長は少なくとも新病院には開設できるよう要望しているという。
ところで同病院の移転新築に関しては、同病院現場から「スタッフの意見や要望をアリバイ的に聴取する形で計画が外部コンサルタントによって進められている。このままでは誰がどんな責任で、どんな目標で誰のために、どういう病院を造るのか全く見えないまま17年には新病院が開院してしまうかもしれない」と懸念が出ている。
今年6月には市民意見も公募して基本計画が策定される。県は現場の声にしっかり耳を傾け、市民は開院後悔やまぬよう口腔外科新設など立派な病院づくりに積極的に声を上げるべきだ。