生鮮魚介類の鮮度維持に効果が実証されている、直径1㍉前後の氷と塩水などの液体の混合物からできる流動氷「スラリーアイス」の製造施設が3月までに八重山漁協に導入された。漁協は、今後の本格運用に向け、水揚げされたばかりの水産物の保冷用タンクに使ったり、一部漁船に積み込んだりして実証実験に取り組んでいる。神経締めと併せて活用すれば、さらなる鮮度保持の効果が発揮できると期待されている。製氷施設導入は、北大東島漁協に次いで県内で2例目。
スラリーアイスは、生鮮魚介類を凍結させることなく急速に冷却し、魚体の凍結温度にできるだけ近づけた温度で保存することが可能なシャーベット状の流動氷。冷水、氷のみでの供給が可能。塩分濃度は、魚の体液とほぼ同じ1%に保つ。
微小な氷粒子が魚全体を包み込むため、通常の氷に比べると急速かつ均一に冷却することができ、鮮度低下を遅らせる効果がある。氷による魚体表面の傷や変形が少なく、身焼けや身割れも防ぐため、商品価値を高めることができるという。
サンマの刺し身を、沖縄の離島で食べられるようになったのもスラリーアイス導入によるものだという。
八重山漁協では製氷施設、製氷タンクなどを整備。既設のろ過水槽でくみ上げた清浄海水を使用した製氷に取り組んでいる。1日2.8㌧を製氷、同10㌧を貯氷する能力を備える。荷さばき場と岸壁で供給できる。
マグロはえ縄漁船の船主の一人は「漁船に積んだところ、2日で解けてしまったが、日帰りのひき縄漁船には使える。工夫次第でいろいろと活用できるだろう」と話す。
与那嶺幸広市場販売課長は「市場の着荷状態も確認しながら、試していきたい。鮮度保持の向上により魚の値段に効果が表れれば」と期待。石垣市水産課の平良守弘課長は「神経締めをした後にこの氷を使うと効果が出るだろう」と話している。
製氷機は、漁協が市の水産業近代化施設整備事業を導入して整備。事業費は5700万円(国66.6%、市23.4%、漁協10%)。