「1本15万円」。これは何の価格だろうか?。例えは悪いが八重山家畜市場の4月セリで取引された707頭の子牛(黒毛)の平均価格だ。かつて「1本10万円」と、畜産農家が子牛の高値を表現していた時期もあったが、その時の5割増しだ▼4月の子牛の平均価格は雄が約63万4300円、雌が52万9300円。平均で約59万900円と、郡内のセリ史上最高価格だ▼全国的な素牛不足に加え、好調な枝肉市場を背景に購買者が2、3年後に販売する肥育素牛を確保するため、競り合っている。高値の中、「意地になっている」との声も聞かれる▼JA八重山地区畜産振興センターによると、高値のもう一つの要因は子牛の優良系統への改良が進んだこと。行政が3年前から一括交付金を活用し、高齢母牛を更新し、県外からの優良雌子牛の導入を支援してきたことが奏功した▼昨年12月ごろから導入母牛から産まれた子牛がセリに上場するようになり、かつてない高値を引っ張っている、という▼牛肉市場は、外国産の価格上昇で国産との価格差が縮まったことで、国産牛肉の消費拡大が期待される。そうなると子牛価格の高値安定にもつながる。JAの担当者は「セリ価格が下がる要素は見つからない」と話す。畜産農家にもミニバブルが来たようだ。
(下野宏一)