国指定特別天然記念物イリオモテヤマネコの発見者、戸川幸夫氏の次女で認定特定非営利活動法人トラ・ゾウ保護基金の理事長を務める戸川久美さん(62)=東京都=が13日午後、西表島入りした。ヤマネコ発見から50年を迎えることについて、久美さんは「これまでの50年を踏まえて、これからの50年が大事だ」と交通事故対策や環境教育など保護活動への意欲を語った。久美さんは14日、ヤマネコのタイプ標本となった個体が見つかった現地を、当時の大原中学校の生徒だった発見者らと訪れる。
久美さんは「ヤマネコは西表島だけという生息地の中にわずか100頭前後しかおらず、世界中から不思議がられている。ヤマネコの活動範囲は広く、西表島の自然は微妙なバランスの中で成り立っている」と西表島の生態系の重要性を指摘した。
そのうえで「あまりに交通事故が多いため、その対策として地元の人にパトロールをお願いし、夜間も頑張ってもらっている。島に住む人たちが懸命に自然保護をやってきたという思いを子どもたちに伝えていけるように、環境教育にも力を入れていきたい」と意気込みを話した。
ヤマネコは1967年の生体発見後、国立科学博物館に移されるまでの約2年間は戸川氏の自宅で飼育されており、久美さんは「ニワトリの頭をエサにしていたため、冷蔵庫の中にはニワトリの頭が並んでいた」と振り返った。
父、幸夫さんについては「ヤマネコを同博物館に移して以来、ヤマネコの話をほとんどしなかった。『人かヤマネコか』というような開発の是非をめぐる政治的な話からは身を引いており、心を痛めていた面もあると思う」と振り返る。
久美さんが初めて西表島に渡ったのは2008年。30年ほど前に幸夫さんと竹富島まで来たことはあるが、このときは西表島には行かなかったという。